| 事務所名 | 分銅会計事務所 |
|---|---|
| 所長名 | 代表税理士 分銅雅一 (登録番号第123843号) |
| 所在地 | 〒160-0022 |
| 電話番号 | 03-6380-1093 |
| FAX番号 | 03-6380-1094 |
| 業務内容 | 自社株式と不動産の承継に関連する 1.相続税・譲渡所得税の税務申告 2.相続・事業承継対策の立案及び実行支援 3.個人及び法人の税務顧問 4.セミナー及び研修の講師 |
| 適格請求書発行事業者登録番号 |
<取引相場のない株式の評価に関する有識者会議について>
令和8年4月16日、国税庁ウェブサイトに、「『取引相場のない株式の評価に関する有識者会議』の開催について」が掲載されました。
これは、取引相場のない株式の相続税評価について、令和6年11月に会計検査院検査報告に おいて、各評価方式の間で評価額にかい離が生じており、類似業種比準価額を適用する割合が 高い規模の大きな会社ほど、株式の評価額が相対的に低く算定されること、また、配当還元方式の還元率が、近年の金利の水準と比べて相対的に高い率となっているおそれがあること等から、評価制度の在り方について、「異なる規模の会社間での公平性や社会経済の変化を考慮し、より適切なものとなるよう検討を行っていくことが肝要」との指摘を受けたところによるものとしています。検査院の指摘をまえ、取引相場のない株式の相続税評価について、相続税法の時価主義の下、適正な評価制度の在り方を検討するために有識者会議を開催するとしています。 具体的に令和6年11月にどのような指摘が会計検査院からされたのか紹介していきます。 まず 、検査の背景として、取引相場のない株式の評価の紹介がされています。
株式相続税及び贈与税の課税対象となる財産のうち取引相場のない株式は、財産評価基本通達(評価通達)によれば、株式の発行会社(評価会社)の規模及び株主の区分に応じて異なる評価方法により評価します。このうち、原則的評価方式として次の3つの評価方式があり、評価会社の規模区分別に選択可能な評価方式が定められています。
①
類似業種比準方式は1株当たりの類似業種比準価額により評価→会社の業績等を表す3要素について類似業種と評価会社とを比べて、相対的に株式を評価
②
純資産価額方式は1株当たりの純資産価額により評価
③
併用方式は類似業種比準価額と純資産価額を併用することにより評価
同族株主(注)の株主等が取得した株式については、上記の原則的評価方式が適用され、同族株主以外の株主等が取得した株式については、特例的評価方式である配当還元方式(年配当金額を一定の率(還元率=10%)で割り戻すことにより株式の価額を計算)が適用されます。
(注) 課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の割合が30%以上のグループ等に属する株主及びその同族関係者
これを図示したものが下記のとおりです。

※国税庁ウェブサイト「https://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary05/pdf/fy05_tokutyou_13.pdf」参照
このような中、令和2、3両年分の相続税及び贈与税の申告のうち、取得した財産に取引相場のない株式がある申告の中から、無作為抽出した計1,600件の申告を対象として会計検査院が検査しました。 その結果、まず、原則的評価方式による評価について下記の状況がみられたとのことです。
類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の27.2%となっており、類似業種比準価額は、純資産価額に比べて相当程度に低い水準でした。これは、計算式に類似業種比準価額が用いられている類似業種比準方式(①)及び併用方式(③)による各評価額が、純資産価額方式(②)による評価額に比べて相当程度低く算定され、各評価方式の間で1株当たりの評価額に相当のかい離が生じている状況がみられ、純資産価額に対する申告評価額の割合の分布状況をみると、その中央値は、大会社0.32倍、中会社0.50倍、小会社0.61倍となっており、評価会社の規模が大きい区分ほど株式の評価額が相対的に低く算定される傾向であることがみられました。これは、類似業種比準価額が下がる方向で評価通達が改正されてきたことや評価通達の計算式が評価会社の業績等の実態を踏まえて株式を評価する方法として適切に機能していないおそれがあることなどが要因となっていて、このような状況は、異なる規模区分の評価会社が発行した取引相場のない株式を取得した者間で株式の評価の公平性が必ずしも確保されているとはいえないと思料するとしています。
次に、特例的評価方式(配当還元方式)による評価の状況について、配当還元方式の還元率(10%)が、評価通達制定当時(昭和39年)の金利等を参考にするなどして設定され、その後、還元率は金利の水準が長期的に低下する中で見直されていないことを要因に、還元率が社会経済の変化に応じたものとなっておらず、近年の金利の水準と比べて相対的に高い率となっているおそれ10%の還元率に基づいて算定される評価額は、通達制定当時と比べて相対的に低くなっているおそれがあると思料するとしています。
これを図示すると下記のとおりとなります。


※国税庁ウェブサイト「https://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary05/pdf/fy05_tokutyou_13.pdf」参照
ここまでみてきたように、大きく原則的評価方式における類似業種比準方式と特例的評価方式における配当還元方式について、令和9年の税制改正大綱に盛り込まれることが予想されます。 また、取引相場のない株式については、法人版特例事業承継税制についても令和9年12月31日までが特例措置の適用期間となっており、併せて改正の議論がされるのではと期待されます。取引相場のない株式の評価の見直しについては今後も注視していくことが肝要です。