事務所名 | 分銅会計事務所 |
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所長名 | 代表税理士 分銅雅一 (登録番号第123843号) |
所在地 | 〒160-0022 |
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業務内容 | 自社株式と不動産の承継に関連する 1.相続税・譲渡所得税の税務申告 2.相続・事業承継対策の立案及び実行支援 3.個人及び法人の税務顧問 4.セミナー及び研修の講師 |
適格請求書発行事業者登録番号 |
<マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について>
令和5年6月30日に国税庁より、「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」の報道発表がされました。
相続税や贈与税における財産の価額は、相続税法第22条の規定により、「財産の取得の時における時価による」こととされており、これを受け、国税庁では財産評価基本通達に各種財産の具体的な評価方法を定めています。財産評価基本通達に定める評価方法については、相続税法の時価主義の下、より適正なものとなるよう見直しが適宜行われていますが、こうした中で、マンションの「相続税評価額」については、「時価(市場売買価格)」との大きな乖離が生じているケースが確認されています。
また、令和5年度与党税制改正大綱(令和4年12月16日決定)に、「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。」旨が記載されました。
そこで、マンションの相続税評価について、市場価格との乖離の実態を踏まえた上で適正化を検討するため、本年1月に有識者会議が設置され、今回の第3回有識者会議において、見直し案の要旨について有識者から意見が出されました。
国税庁では、今後、これを踏まえ、通達案を作成し、意見公募手続を行う予定です。
有識者会議において、まず注目されたのが、「乖離率」の実態についてです。ここでいう「乖離率」とは、マンションの市場価格から相続税評価額を除したものであり、統計資料において、マンションの乖離率が平均2.34倍と一戸建ての乖離率の平均1.66倍よりもかなり高く、マンション全体の約65%は、相続税評価額が市場価格の半額となっている現状が示されました。
※国税庁ウェブサイト「https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023006-018.pdf」参照。
次に、この「乖離率」が生ずる主な要因について、考察されています。具体的には、建物の評価額は、再建築価格をベースに算定されている一方で、市場価格はそれに加えて建物の総階数、マンション一室の所在階も考慮されているほか、評価額への築年数の反映が不十分だと、評価額が市場価格に比べて低くなるケースがあり、建物の効用の反映が不十分であると指摘されています。
また、マンション一室を所有するための敷地利用権は、共有持分で按分した面積に平米単価を乗じて評価されますが、この面積は一般的に高層マンションほどより細分化され狭小となるため、このように敷地持分が狭小なケースは立地条件の良好な場所でも、評価額が市場価格に比べて低くなり、立地条件の反映が不十分であると指摘されています。
このような観点から、相続税評価額が市場価格と乖離する要因となっている築年数、総階数(総階数指数)、所在階、敷地持分狭小度の4つの指数に基づいて、評価額を補正する方向で通達の整備を行うと発表されました。
具体的には、これら4指数に基づき統計的手法により乖離率を予測し、その結果、評価額が市場価格理論値の60%(一戸建ての評価の現状を踏まえたもの)に達しない場合は60%に達するまで評価額を補正するというものです。これを図示したものが次のものです。
※国税庁ウェブサイト「https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023006-018.pdf」参照。
上記図に基づけば、見直し前において、評価水準(乖離率の逆数)が60%未満であったものは60%に上方修正されることになります。一方で、評価水準が100%を超えるものであったものは100%に下方修正されることとなります(下方修正は極めて軽微であると見込まれます)。さらに詳細な計算方法は以下のとおりです。
まず、区分所有に係る財産の各部分(建物部分及び敷地利用権部分。ただし、構造上、居住の用途に供することができるものに限ります。以下「マンション一室」といいます。)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価することとします。
現行の相続税評価額
× 当該マンション一室の評価乖離率 × 最低評価水準0.6(定数)
⇒重回帰式による理論的な市場価格
(注1) 「マンション一室」には、総階数2階以下の物件に係る各部分及び区分所有されている居住用部分が3以下であって、かつ、その全てが親族の居住用である物件(いわゆる二世帯住宅等)に係る各部分は含みません。
(注2) 評価乖離率が0.6分の1以下(約1.67以下)となるマンション一室は現行の相続税評価額×1.0とします。
(注3) 評価乖離率が1.0未満となるマンション一室の評価額は次によります。
現行の相続税評価額×当該マンション一室の評価乖離率
(注4) 不動産鑑定評価書等に照らし評価額が通常の取引価額を上回ると認められる場合には、当該価額により評価します。
上記の「評価乖離率」は、「①×△0.033+②×0.239+③×0.018+④×△1.195+3.220」により計算したものとします。
①
:当該マンション一室に係る建物の築年数
②
:当該マンション一室に係る建物の「総階数指数」として、「総階数÷33(1.0を超える場合は1.0)」
③
:当該マンション一室の所在階
④ :当該マンション一室の「敷地持分狭小度」として、「当該マンション一室に係る敷地利用権の面積÷当該マンション一室に係る専有面積」により計算した値
【参考】上記の算式は、次の(1)の目的変数と(2)の説明変数に基づく重回帰式です。
(1)目的変数
平成30年分のマンション一室の取引事例における取引価格÷当該マンション一室の相続税評価額
(2)説明変数 2.に掲げる算式における①、②、③、④
上記の評価方法の適用後も、最低評価水準と重回帰式については、固定資産税の評価の見直し時期に併せて、当該時期の直前における一戸建て及びマンション一室の取引事例の取引価格に基づいて見直すものとするとしています。また、当該時期以外の時期においても、マンションに係る不動産価格指数等に照らし見直しの要否を検討するものとするとしています。
加えて、マンション市場価格の大幅な下落その他見直し後の評価方法に反映されない事情が存することにより、当該評価方法に従って評価することが適当でないと認められる場合は、個別に課税時期における時価を鑑定評価その他合理的な方法により算定する旨を明確化します(他の財産の評価における財産評価基本通達6項に基づくこれまでの実務上の取扱いを適用。)とのことです。
今回のマンションの相続税評価額の見直しについては、令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産に適用するとしています。したがって、令和5年以前に取得しているマンションについても見直し後の評価により行うこととなります。
令和6年1月以降、贈与税の改正や相続税における生前贈与加算(被相続人から生前に暦年課税に係る贈与によって取得した財産のうち相続開始前3年以内に贈与されたものについては、贈与税がかかっていたかどうかに関係なく加算するもの)も大きく変わる予定です。相続対策等については、抜本的な見直しが求められる過渡期を迎えています。