事務所名 | 分銅会計事務所 |
---|---|
所長名 | 代表税理士 分銅雅一 (登録番号第123843号) |
所在地 | 〒160-0022 |
電話番号 | 03-6380-1093 |
FAX番号 | 03-6380-1094 |
業務内容 | 自社株式と不動産の承継に関連する 1.相続税・譲渡所得税の税務申告 2.相続・事業承継対策の立案及び実行支援 3.個人及び法人の税務顧問 4.セミナー及び研修の講師 |
適格請求書発行事業者登録番号 |
<令和5年度税制改正大綱(贈与税と相続税)について>
令和4年12月16日、自由民主党および公明党から「令和5年度税制改正大綱」が公表されました。公表直前に「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」について議論され、大きなニュースとなりましたが、今回は、税制改正大綱の中から、「資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築」について紹介していきます。
この「資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築」については、令和3年度税制改正大綱において、「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」として本格的な検討を進める旨が記載され、それを具体的に一歩進めた内容として今回公表されました。
今回の改正が実現すると、特に贈与税と相続税の課税関係に大きな影響を与えることが想定されます。
(1)相続時精算課税制度について
まず、相続時精算課税制度については、「相続時精算課税制度の使い勝手向上」というタイトルで、具体的に税制改正大綱では下記のとおり紹介されています。
「相続時精算課税制度は、平成15年度に次世代への早期の資産移転と有効活用を通じた経済社会の活性化の観点から導入されたものである。選択後は生前贈与か相続かによって税負担は変わらず、資産移転の時期に中立的な仕組みとなっており、暦年課税との選択制は維持しつつ、同制度の使い勝手を向上させる。具体的には、申告等に係る事務負担を軽減する等の観点から、相続時精算課税においても、暦年課税と同水準の基礎控除を創設する。これにより、生前にまとまった財産を贈与しにくかった者にとっても、相続時精算課税を活用することで、次世代に資産を移転しやすい税制となる。」(※令和5年度税制改正大綱16頁参照)
今回、注目すべきは、後述予定の暦年課税制度と相続時精算課税制度の選択制は従来と変わらず維持したうえで、相続時精算課税制度においても暦年課税制度と同様に基礎控除額110万円が創設され、さらに当該金額以下であれば、贈与税の確定申告を不要にするといった点です。
この改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用とするとしています。
したがって、例えば令和6年中に1,000万円、令和7年中に500万円をそれぞれ贈与を受けた場合の贈与税の課税対象となる税金は、令和6年について890万円(1,000万円△110万円)、令和7年について390万円(500万円△110万円)となり、かつ、相続時に精算(持ち戻し)対象となる金額も890万円、390円となる点が大きな改正点です。これを図示すると下記の図のとおりです。
(2)暦年課税制度について
次に暦年課税制度については、「暦年課税における相続前贈与の加算」というタイトルで、税制改正大綱では下記のとおり紹介されています。
「現行、相続開始前3年以内に受けた贈与は相続財産に加算することとなっている。暦年課税においても、資産移転の時期に対する中立性を高めていく観点から、相続財産に加算する期間を7年に延長する。その際、過去に受けた贈与の記録・管理に係る事務負担を軽減する観点から、延長した期間(4年間)に受けた贈与のうち一定額については、相続財産に加算しないこととする。」(※令和5年度税制改正大綱17頁参照)
この部分については、さらに第二の具体的内容として下記のとおり記載されています。
「相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から 100 万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。」(※令和5年度税制改正大綱42頁参照)
贈与税の暦年課税制度は、一暦年間で受贈者が贈与を受けた総額が110万円までであれば贈与税は元々課税されず、それを超える部分の金額に対して、超過累進税率による税率を乗じて贈与税額を計算していく考え方です。そして、相続又は遺贈により財産を取得した者が、その相続の開始前3年以内に被相続人から贈与を受けていた部分については、いわゆる「生前贈与加算」として、相続税の計算上、持ち戻しの対象となっていました。
一方で、令和3年度税制改正大綱において、現行の贈与税や相続税の課税について、下記のような問題点が指摘されていました。
「わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。
諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。
今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。」(※令和3年度税制改正大綱18頁参照)
このような富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を図るため、今般、「生前贈与加算」の対象期間が3年から7年に大幅に伸びたものと考えられます。
一方で、今回の改正により3年より前の伸びた期間の生前贈与加算については、その合計額から100万円を控除した金額が対象となる旨が記載されています。これを図示すると下記の図のとおりとなります。
以上のように、令和5年度税制改正大綱においては、相続時精算課税制度と暦年課税制度が大きく改正される予定です。
特に相続時精算課税制度は、一度選択すると暦年課税制度には戻せなくなってしまうため、現状、ほとんどの贈与税の申告は暦年課税制度で提出されていると考えられます。実際、相続時精算課税制度を利用するメリットは、不動産収益物件を贈与して、家賃収入を実質的に贈与者から受贈者へ移転させていくケースや自社株式(取引相場のない株式)を計画的に後継者へ移転させていくような場合に限定されています。一方、単純に現金を贈与したい場合に相続時精算課税制度を選択するようなことは一般的には行われていなかったと思われます。
ところが、今回の税制改正が実現すると、新たに相続時精算課税制度に基礎控除額110万円が創設され、かつ、110万円部分は精算(持ち戻し)対象とならなくなるため、暦年課税制度から相続時精算課税制度へ移行する納税者が増えるのではと考えられます。
例年の流れだと、税制改正大綱は年明けの通常国会を経て、毎年3月末ごろに法案成立となります。どちらの改正も令和6年1月1日以後の贈与分からの適用となる予定ですが、今後詳細な内容も早めに確認して、相続対策を有効に行って頂ければ幸甚です。
<法人税等の調査事績の概要(令和3事務年度)について>
令和4年12月5日、国税庁のウェブサイトに、「令和3事務年度 法人税等の調査事績の概要」が公表されました。令和3事務年度というのは、具体的には令和3年7月1日から令和4年6月30日を指していて、調査事績は令和3年2月1日から令和4年1月31日までの間に事業年度が終了した法人を対象に、令和3事務年度中に実施した調査に係るものを集計したものです。
具体的には「Ⅰ 調査事績の概要」「Ⅱ 主要な取組」「Ⅲ 参考計表」から構成されています。この中から、特に特筆すべき点について、紹介していきます。
(1)法人税および(法人)消費税の実地調査の状況
「Ⅲ 参考計表」の別表1および別表3から読み取れることとして、令和2事務年度と令和3事務年度の実地調査件数の推移です。令和2事務年度は令和2年7月1日から令和3年6月30日の期間中における調査事績であり、新型コロナウィルス感染症拡大の影響で実地調査がほとんど行えなかったことが窺えます。令和2事務年度の反動で令和3事務年度は大きく前年対比が増えている状況です。
※国税庁ウェブサイト「https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/hojin_chosa/pdf/01.pdf」参照
(2)主要な取組
「Ⅱ 主要な取組」については、調査に際しての特に取り組んだ内容として、下記の法人に対してのものが紹介されています。
1.消費税還付申告法人
2.海外取引法人等(法人税と源泉所得税)
3.無申告法人
このうち、消費税の還付については、典型的な「国内仕入れ(課税)及び輸出売上げ(免税)の水増し計上」が紹介されています。令和2年度の消費税法の改正により、「居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の適正化」が行われ、いわゆる居住用賃貸建物の還付スキームが封じられることとなりました。一方で、輸出取引等を通じた還付については、不正還付といった悪質なものが多いため、厳正な調査が実施されています。
(3)簡易な接触事績の概要
簡易な接触とは、税務署において書面や電話による連絡や来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請するものであり、申告内容に誤り等が想定される納税者等に対して行われるものです。
「Ⅰ 調査事績の概要」の簡易な接触事績の概要によると、令和2事務年度より令和3事務年度は減少しています。これは、(1)法人税および(法人)消費税の実地調査の状況とは逆に実地調査が増えたことに起因するものと考えられます。新型コロナウィルス感染症拡大の影響で令和2事務年度は実地調査が困難であったため、簡易な接触が増え、その反動で、令和3事務年度は減少しています。
(4)まとめ
法人税等の調査事績については、令和2事務年度と令和3事務年度で大きな件数の変動があったものの、その調査の具体的な内容については、従来から大きな変化はないものと感じられます。一方で、税理士法第33条の2に、いわゆる「書面添付制度」が定められています。「書面添付制度」は、税理士が、申告書の作成等に関し、計算し、整理し若しくは相談に応じた事項又は審査した事項を記載するものであり、当該書面が申告書に添付されている場合には、税務調査の事前通知前又は更正を行う前に、税理士に対して意見を述べる機会を与えられています。法人税の書面添付の提出割合はわずか10%程度で、まだまだ普及されているとは言い難い状況です。税務調査の対策として、ぜひ「書面添付制度」も有効に活用されたい。
<令和5年度税制改正大綱策定について>
令和5年11月18日、自民党税制調査会は総会を開き、令和5年度税制改正大綱策定に向けた検討を開始しました。
例年、税制改正大綱は12月第2週あたりに発表され、約20日間にわたり議論されます。税制調査会での検討に先立ち、財務省が各府省庁から要望を集め、その要望についても検討されます。8月31日時点の単純集計した令和5年度税制改正要望の状況は下記のとおりです。
各府省庁から具体的な要望事項の概要については、下記ウェブサイトのリンク先をご参照ください。
※ https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2023/request/05y_all.pdf
この中から、「新設」「拡充」項目で、特にトピックとなる内容について詳述していきます。
(1)金融庁
①NISAの抜本的拡充等
NISAについては、現在、一般のNISAとつみたてNISAの2種類があります。つみたてNISAは投資可能期間が平成30年から令和24年までの予定でありますが、現行の一般のNISA制度は令和5年までとなり、令和6年からは非課税対象や非課税投資枠が見直され、2階建ての新しいNISAになることが予定されています。ただ、新しいNISA制度においても投資可能期間は令和6年から令和10年までの5年間と有限であり、このNISA制度そのものを恒久化しようという議論がされています。
②その他
例年、金融庁は「生命保険料控除制度の拡充」「死亡保険金の相続税非課税限度額引上げ」「上場株式等の相続税に係る見直し」を要望として掲げているが、いずれも実現していません。
(2)文部科学省
①教育資金一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の拡充
贈与税については相続税の補完税と言われているが、昨今の過度な相続税対策をふまえ、「資産移転の時期に中立な税制とするには延長が妥当だ」との考えから、いわゆる生前贈与加算(相続発生前の3年間の相続人への贈与は相続財産として相続税に加算して課税する制度)を現行の3年間から5年~10年に延長する議論が10月に政府税制調査会の専門家会合でされています。
一方で、次世代への早期の資産移転を促すために、教育資金一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置については、現行制度上の非課税枠は1,500万円であるところ、2000万円に引き上げるとともに、1500 万円を超える分の贈与額については、その5%以上の額を学校法人・公益法人等に別途寄附したことを条件に利用可能とするといった要望を出しています。
(3)国土交通省
①空き家の発生を抑制するための特例措置の拡充及び延長
「空き家の発生を抑制するための特例措置(「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」については、平成28年4月1日から適用が開始され、相続により生じた空き家について一般的な制度として確立されつつあります。一方で、本特例制度は、対象物件の引渡しまでに家屋の耐震改修工事を完了するか、除却工事を行い更地として譲渡することが要件となっています。特例の適用期限は令和5年12月31日までの譲渡でありますが、その適用期限を4年間延長(令和9年12月31日まで)するとともに、空き家の譲渡後に、買主がその家屋の耐震改修工事又は除却工事を行う場合も適用対象とすることを求めています。
上記の他にも様々な議論がされています。例えば、令和5年10月1日から開始される予定の消費税のインボイス制度です。今まで消費税の納税が免除されていた課税売上高1,000万円以下の中小事業者が課税事業者になることが余儀なくされ、中小事業者の税負担が重くなるといった危惧がなされています。この点について、激変緩和措置としてこれらの中小事業者の税額を当初3年間は消費税額の20%とするような案が浮上しています(執筆時点)。引き続き、税制改正大綱の正式発表まで報道機関の発表をご注視ください。
<「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置に関するQ&A」について>
令和4年10月28日、国税庁のウェブサイトに「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置に関するQ&A」が掲載されました。
これは、令和4年度税制改正により、記帳水準の向上に資する観点から、記帳義務の適正な履行を担保し、帳簿の不保存や記載不備を未然に防止するため、過少申告加算税・無申告加算税(以下「過少申告加算税等」という)の加重措置が講じられたものに伴いQ&A形式でまとめられたものです。
本措置の概要は下記のとおりですが、詳細は、国税庁ウェブサイト
(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0022009-072_01.pdf)をご参照ください。
<対象となる事業者>
・事業所得、不動産所得、山林所得を生ずべき業務を行う個人事業者
・法人
・消費税の課税事業者
<対象となる帳簿>
・仕訳帳や総勘定元帳の売上げ(収入)の金額に関する部分
・売上帳や現金出納帳などの売上げ(収入)の金額が確認できる帳簿
<加算措置>【Q&AのQ1参照】
・帳簿の提示等をしなかった場合
⇒過少申告加算税等の割合が10%加重
・帳簿への売上金額の記載等が、本来記載等をすべき金額の2分の1未満だった場合
⇒過少申告加算税等の割合が10%加重
・帳簿への売上金額の記載等が、本来記載等をすべき金額の3分の2未満だった場合(上記2分の1未満の場合を除く)
⇒過少申告加算税等の割合が5%加重
<適用時期>【Q&AのQ2参照】
令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する申告所得税、法人税および地方法人税、消費税について適用され、各税目の適用時期は下記のとおりです。
・申告所得税
⇒令和5年分から適用
・法人税および地方法人税
⇒令和5年10月決算期分から適用(例:3月決算法人の場合、令和6年3月決算期分)
・消費税
⇒課税期間が1年間の場合には、申告所得税、法人税および地方法人税と同様
<対象となる加算税>【Q&AのQ3参照】
・過少申告加算税
・無申告加算税
※重加算税や不納付加算税は対象外
本Q&Aの公表に先立ち、令和4年9月に国税庁ウェブサイト
(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0022009-072_02.pdf)に、告知案内がございます。
本Q&Aおよび告知案内ともに、「会計ソフト」の利用が推奨されています。今回の加重措置は、令和6年1月以降の適用となりますが、令和5年10月から消費税のインボイス制度も開始される予定です。現在、会計ソフトによる記帳をされていない納税者は、早いタイミングで会計ソフトの利用を検討されるのが肝要です。
<スマホアプリ納付の利用開始について>
令和4年10月21日に、国税庁のウェブサイトに「スマホアプリ納付の利用開始について」の掲載が案内されました。
スマホアプリ納付とは、国税庁長官が指定した納付受託者(GMOペイメントゲートウェイ株式会社)が運営するスマートフォン決済専用のWebサイト(国税スマートフォン決済専用サイト)から、納税者が利用可能なPay払い(〇〇ペイ)を選択して納付する手続であり、令和4年12月1日から利用可能となる予定です。
「国税スマートフォン決済専用サイト」は、国税庁長官が指定した納付受託者が運営する国税のスマホアプリ納付専用の外部サイトであり、利用可能なPay払いとして下記が紹介されています。
※国税庁ウェブサイト
「https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/smartphone_nofu/index.htm」参照
平成30年分の所得税申告からスマホでの確定申告が利用できるようになり、税務署へ申告書の作成および提出のために出向いたり、書面で郵送することなく、スマホ一つで確定申告を完結できるようになりました。一方で、平成31年1月4日以降、自宅等において納付に必要な情報(氏名や税額など)をいわゆる「QRコード」(PDFファイル)として作成・出力することにより可能となったものの、スマホでの納付はできませんでした。
今回の利用開始によって、スマホ一つで確定申告書の作成から提出および納付までが可能となる予定です。
ただ、コンビニ納付(QRコード、バーコード)と同様に、一度の納付での利用上限金額が30万円であることには注意を要します。
毎年、所得税申告や個人消費税の申告が必要な納税者は、一般的に振替納税(口座引き落とし)を利用するのが便利であり、また、税額が大きい場合には、決済手数料を支払ってでもクレジットカード納付を選択してポイントを貯める方が有用な場合もあります。
今回のスマホアプリ納付の利用開始に伴い、従来よりも利便性が向上するのは間違いありませんが、各自の置かれた状況に応じて、上手く活用するのが肝要です。
<「年末調整がよくわかるページ」の開設および
「令和4年分年末調整のための各種様式」の掲載について>
令和4年9月22日に、国税庁のウェブサイトに「年末調整がよくわかるページ」の開設および「令和4年分年末調整のための各種様式」の掲載が案内されました。
10月に入り、令和4年の年末調整手続きを本格的に準備する時期に入りました。年末調整の概ねのスケジュールは下記の図のとおりです。
※国税庁ウェブサイト「https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/pdf/01.pdf」参照
本年の大きな変更点として、例年、源泉徴収義務者の方向けに送付されていた「年末調整のしかた」、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」及び「源泉徴収税額表」のパンフレット等は廃止され、代わりにリーフレットが送付されるという点です。従来の3種類のパンフレットは、国税庁ウェブサイトの「年末調整がよくわかるページ」に掲載される予定です。
この「年末調整がよくわかるページ」は、「源泉徴収義務者(給与の支払者)」向けと「給与所得者(従業員)」向けに大きく分かれていて、「源泉徴収義務者(給与の支払者)」向けのほうは、「年末調整のしかた・源泉徴収票の作成と提出」について、動画による説明や上記紙媒体での配布が廃止されたパンフレット等が掲載されています。一方、「給与所得者(従業員)」向けのほうは、「各種申告書・記載例」などが動画と共に掲載されています。
代わりに送付されるリーフレットには、「令和4年分の主な改正事項」と「令和5年1月からの主な改正の概要」が掲載されています。
「令和4年分の主な改正事項」のうち、「源泉所得税関係(令和4年分の年末調整)」については、令和3年分と比較して大きな改正事項はありません。一方で、「法定調書関係」については、給与支払報告書の提出枚数が2枚から1枚へ変更となる点、成年年齢の引き下げに伴い、「令和4年分 給与所得の源泉徴収票」の「未成年者」欄が、従業員が平成17年1月3日以後に生まれた方の場合に「〇」を付すこととなる点、短期退職手当等に関する計算方法が変更となった点が主な改正事項として掲げられています。
また、「令和5年1月からの主な改正の概要」のうち「源泉所得税関係」については、非居住者に係る扶養控除が、それまでは16歳以上であれば全て対象であったところが、30歳以上70歳未満で「留学生」「障害者」「38万円以上の送金を受けている者」以外の者が対象外となる点、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記載方法の点が掲げられています。なお、「令和5年分の源泉徴収税額表」の税額については、令和4年分から変更はない旨も紹介されています。
例年、「年末調整のしかた」、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」及び「源泉徴収税額表」のパンフレット等が届いてから準備を始める方が多いと思われますが、本年は簡易的なリーフレットのみが送付される予定のため、早い段階から、国税庁ウェブサイトの「年末調整がよくわかるページ」を確認して、準備に取り掛かることをお勧めします。
<スマートフォン及びタブレット端末による
電子納税証明書等の申請について>
令和4年9月13日に、国税庁のウェブサイトに「スマートフォン等による電子納税証明書等の申請について」が掲載されました。
新型コロナウィルス感染症拡大の影響に伴う各種給付金等の支給に際して、過去の申告書等のみならず納税証明書等が必要になる場面は多く存在します。
納税証明書については、特に個人において、過去に申告済みの確定申告書等の提出を求められる場面が急増しています。
令和4年9月20日から、電子納税証明書(PDF形式及びXML形式)の交付及び納税証明書の郵送による書面交付について、従来のe-Taxソフト(WEB版)に加え、e-Taxソフト(SP版)から申請ができるようになりました。
これにより、自身のスマートフォン及びタブレット端末からe-Taxソフト(SP版)にログインし、「納税証明書の交付請求書(電子交付用)」又は「納税証明書の交付請求(書面交付用)」から選択し、画面表示に従い必要事項を入力し、送信することで電子納税証明書の交付及び納税証明書の郵送による書面交付の申請ができることとなりました。つまり、税務署窓口に行く必要がなく、電子納税証明書(PDF)をスマホで請求してスマホで受け取れるようになったということです。
具体的な請求から受取りまでの流れは下記図のとおりです。
※国税庁ウェブサイト https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nozei-shomei/pdf/0022008-056_01.pdf 参照
ただし、e-Taxソフト(SP版)を利用した納税証明書の交付請求には、申請者本人(法人の場合は代表者本人)のマイナンバーカードが必要となるため、留意が必要です。特に法人の場合は、代表者本人のマイナンバーカードが必要なため、代理人が申請する場合は、スマホではなく、パソコンなどで申請する必要があります。
スマートフォン及びタブレット端末による電子納税証明書等の申請以外についても、事前に自宅やオフィスでオンライン請求をして、税務署窓口で受け取る場合や郵送で受け取る場合も選択できます。詳しくは、国税庁ウェブサイトのリーフレットをご参照ください。(https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nozei-shomei/pdf/0022008-056_01.pdf)
デジタル庁の創設により、電子申告、電子納税、申告書等閲覧や納税証明書発行の電子サービスが充実してきています。
改正電子帳簿保存法や(電子)インボイス制度の準備を進めると共に、これらのサービスも積極的に活用して頂ければ幸甚です。
<「暮らしの税情報」について>
令和4年7月11日、国税庁のウェブサイトに、令和4年度版のパンフレット「暮らしの税情報」が公表されました。 「暮らしの税情報」は、例年、その年の税制改正を反映したものがこの時期に公表されますが、暮らしに関する税金の考え方が一覧となっていて、概要を把握するのに有効な情報の一つです。 「暮らしの税情報」に掲載されている具体的な項目は、下記に掲げるとおりです。
■ 税の基礎知識
■ 給与所得者と税
■ 高齢者や障害者と税
■ 暮らしの中の税
■ 不動産と税、贈与・相続と税
■ 申告と納税
■ その他
参考URL https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/pdf/000.pdf
「税の基礎知識」では、所得税や消費税の仕組み、帳簿書類の保存期間や青色申告制度についてその概要が記載されています。 特に、「記帳や帳簿等保存・青色申告」については、電子帳簿保存法制度についても触れられています。 また、「消費税のしくみ」においては、現行の「区分記載請求書等保存方式」から令和5年10月1日に開始が予定されている「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」についても下記のとおり紹介されています。
「給与所得者と税」では、給与所得の源泉徴収票の見方や、配偶者控除や扶養控除といった家族と税、会社員が退職した際の退職金と税について紹介されています。
「高齢者や障害者と税」では、公的年金等の所得計算や年金所得者の確定申告不要制度といった高齢者と税、障害者と税については障害者本人が受けられる特例と障害者を扶養している場合に受けられる特例が分かりやすく整理されています。
「暮らしの中の税」では、「医療費を支払ったとき」「保険と税」「寄附金を支出したとき」「災害等にあったとき」「株式・配当・利子と税」についてそれぞれ紹介されています。
医療費を支払った際には、通常の医療費控除とは別にセルフメディケーション税制といった特例を選択することもできます。 保険については、主として生命保険について紹介されていて、生命保険料控除について、平成24年1月1日以後に契約した新契約に関するものとそれ以前の旧契約に関するものが一覧となっています。
寄付金はいわゆる「ふるさと納税」が人気となっていますが、一定の寄付金については、所得税において所得控除と税額控除が選択となっていて、いずれか有利な方法を適用することができます。 また、昨年から続いている新型コロナウィルス感染症による影響で申告や納税の期限を延長したいとき、震災や風水害も日本各地で発生していますが、これらの災害が発生した場合の雑損控除などについても詳細に紹介されています。 「株式・配当・利子と税」については、租税特別措置法で特殊な取り扱いが定められており、いわゆる「NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」についても下記のとおり一覧となっていて大変分かりすい表が掲載されています。 特に来年末で期限切れとなる「NISA」については、現在(令和5年9月5日執筆時点)において恒久化の議論がされています。 令和5年度の税制改正大綱も注目されるところです。
「不動産と税、贈与・相続と税」では、おおきく不動産に関する内容と贈与・相続に関する内容が紹介されています。 不動産の中でもマイホームについては、取得・保有・売却の場面で多くの特例制度が存在します。 マイホームで最も身近な特例制度であるいわゆる「住宅ローン控除」については、詳細に紹介されており、令和4年度の税制改正も反映されているため、制度の概要を把握するのに役立つと思われます。 贈与については、贈与税の概要と3つの大きな非課税制度であります「住宅取得等資金」「教育資金」「結婚・子育て資金」の各種特例について紹介されています。 相続については、相続税の基礎控除や財産の代表的な宅地の評価についてその概要が紹介されています。
「申告と納税」では、各税目の申告期限と納期限の一覧、5つの納付方法などが紹介されています。 具体的な確定申告書の作成は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」が大変充実しており、その案内や電子申告やスマホ申告についても踏み込んだ紹介がされています。
最後に「コラム≪国税関係手続のデジタル化≫」として、「年末調整手続の電子化」について掲載されています。 これから年末調整の時期を迎えますが、マイナポータルを活用することで、従業員も会社の給与計算担当者も利便性の向上が期待されます。
以上のように、「暮らしの税情報」は、税金の概要を知る上で大変有用なものであり、特に生活に密接に関連した部分は、比較的深く掘り下げて紹介されています。気になる項目について、概要をこちらで把握して、より詳細な取り扱いをタックスアンサーなどで調べていくことをお薦めします。
<「令和3年度におけるe-Taxの利用状況等」について>
令和4年8月12日、国税庁のウェブサイトに、「令和3年度におけるe-Taxの利用状況等について」が公表されました。国税庁では、デジタルガバメントの実現に向けた政府全体の方針に基づき、利用目標の設定を含む累次の計画を策定し、これに沿って、e-Tax の普及及び定着に取り組んでいます。その令和3年度における各申告手続等のオンライン利用率等が公表されました。
今回は、これらの利用状況等について紹介していきます。
(1)オンライン(e-Tax)利用率とオンライン(e-Tax)利用件数
オンライン利用率とは、申告等各手続の総件数のうち、e-Tax を利用して行ったものの件数(e-Tax 利用件数)が占める割合です。
詳細は、下記の図のとおりですが、注目すべきは主な税目ごとの利用率です。
所得税申告は59.2%、消費税申告(個人)は68.4%、相続税申告は23.4%、法人税申告は87.9%、消費税申告(法人)は88.7%です。
所得税申告は税理士等の専門家に依頼せずに、納税者本人が自分で申告しているケースが多く、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、税務署等の窓口業務が限定されているとはいえ、いまだに60%に満たない数値です。ここで特筆すべきは、消費税申告(個人)の割合が非常に高いという点です。これは、消費税が関係する個人の所得税申告となると、納税者本人による申告が困難なため、税理士等の専門家に依頼していることが考えられます。個人の消費税の申告が関係する代表的なものは、例えば、事業所得全般やテナント等の賃貸を中心とした不動産所得が該当します。
次に相続税申告ですが、そもそも相続税の電子申告(e-Tax)は、令和元年10月1日から開始されています。下記表のとおり、令和2年度が14.4%でしたが、令和3年度は23.4%と着々と増加している傾向にあります。相続税の確定申告は添付書類がかなり膨大なものとなりますが、イメージデータ(PDF形式)も8MBまで対応していて、追加送信機能を利用すれば、8MBを超えるデータも送信できることから、利便性は向上しているといえます。
最後に法人税と消費税申告(法人)ですが法人の確定申告は一般的に税理士等の専門家に依頼しているケースが大半であるということもありますが、元々の利用率がかなり高い状況です。さらに、令和2年4月1日以後に開始する事業年度(課税期間)から大法人(内国法人のうち、その事業年度開始の時において資本金の額又は出資金の額(以下「資本金の額等」といいます。)が1億円を超える法人)を中心に電子申告が強制適用となったため、さらに利用率が普及していると考えられます。
※国税庁ウェブサイト
https://www.e-tax.nta.go.jp/topics/0408pressrelease01.pdf
(2)キャッシュレス納付割合
キャッシュレス納付割合は、 全納付件数のうち、振替納税、ダイレクト納付(e-Tax による口座振替)、インターネットバンキングによる電子納税及びクレジットカード納付の件数が占める割合です。
納付手段別納付件数(平成30~令和3年度)は、下記の図のとおりです。
※国税庁ウェブサイト
https://www.e-tax.nta.go.jp/topics/0408pressrelease01.pdf
キャッシュレス納付割合も(1)と同様に堅調に増加しています。特に、キャッシュレス納付のうち、電子納税とクレジットカード納付が増加しています。当然ではありますが、逆に窓口での納付(特に金融機関窓口での納付)が減少しています。金融機関の窓口業務においても、新型コロナウィルス感染症拡大の影響もあり、非対面を希望する納税者も増えていて、これがキャッシュレス納付の利用率引き上げにつながっていると考えられます。
(3)まとめ
令和3年9月1日から内閣の直下に創設されたデジタル庁や、改正電子帳簿保存法や電子インボイスの導入によって、電子化は今後さらに拡大していくことが考えられます。個人の所得税については、スマホ申告やマイナポータルを利用して利便性の拡充も予定されています。これらの機能を上手く利用して、適切な申告および納税をして頂ければ幸甚です。
<「電子帳簿等保存制度の特設サイト」について>
令和4年7月25日、国税庁のウェブサイトに、「電子帳簿等保存制度の特設サイト」が公表されました。電子帳簿保存法は、正式には、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、平成10年に創設されたものです。この電子帳簿保存法が、経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上等に資するため、令和3年度の税制改正において、所要の改正等が行われ、帳簿書類を電子的に保存する際の手続等について、抜本的な見直しがなされました。
特に、電子データの電子保存については、令和4年1月1日から施行されているが、令和5年12月31日までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば電子保存をする必要はないといった、いわゆる経過措置も設けられました。ただ、令和6年1月からは保存要件に従った電子データの保存が必要となるので、そのために必要な準備を講じておくことが重要となります。
本特設サイトはこの電子帳簿等保存制度について、その概要から準備に至るまで大変分かりやすく掲載されています。今回は、この特設サイトについて紹介をします。
「電子帳簿等保存制度の特設サイト」には、「制度別に調べる」「項目別に調べる」「製品・問い合わせ先を調べる」から成っていて、「制度別に調べる」がさらに「電子取引」「電子帳簿・電子書類」「スキャナ保存」の3つに分かれています。
そして、「電子取引」「電子帳簿・電子書類」「スキャナ保存」の3つについては、さらに「紹介動画・パンフレット」「法令・法令の解釈」「よくある質問」「届出書の様式」に分かれていますが、このうち、紹介動画とパンフレットが導入編としてイメージしやすい内容となっています。特に、紹介動画は12分強の内容で要点がまとまっています。
https://www.nta.go.jp/publication/webtaxtv/202111_a/webtaxtv_wb.html
また、制度の概要パンフレットについては、「帳簿書類の電子化」「書類のスキャナ保存」「電子取引のデータ保存方法」について掲載されています。特に、実務で影響が大きいと思われる「電子取引のデータ保存方法」については、次のとおり紹介されています。
※国税庁ウェブサイト
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf
(1) 保存対象となる電子データ
令和4年1月1日以降(2年猶予され令和6年1月1日以降、完全適用)に、請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要となります。言い換えると、従来、紙でやりとりしていた場合に必要とされていた証憑書類を電子データでやりとりした場合に電子保存が必要となります。そして、この取り扱いは、紙での保存が認められずに電子による保存へと一本化される点に留意する必要があります。つまり、電子データでやりとりしたものを紙で出力して紙で保存したとしても、保存要件を満たさないということです。
(2) 保存方法
それでは、具体的にどのように電子保存していけばよいのでしょうか。
これについては、まず改ざん防止のための措置をとる必要がありますが、「タイムスタンプ付与」や「履歴が残るシステムの導入」といった方法以外にも「改ざん防止のための事務処理規程を定める」様な形式でも構いません。
一方、「電子保存」する際に、「日付・金額・取引先」で検索できるようにする必要があり、具体的な専用システムを導入する必要はないものの、索引簿を作成する方法や、規則的なファイル名を設定する方法での対応をとる必要があります。
具体的には次のような保存の仕方です。
※ 国税庁ウェブサイト
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf
(3) まとめ
今回の電子帳簿保存法の改正は、DX化の流れを受けて、紙媒体から電子媒体へと移行が進んでいく大きな契機となっていると考えられます。消費税のインボイス制度も適用間近となる中で、本特設サイトを活用して、改正電子帳簿等保存法の準備を進めて頂ければ幸甚です。
<「財産債務調書制度等の見直し」について>
令和4年7月5日、国税庁のウェブサイトに、「財産債務調書制度等の見直しついて」が公表されました。これは、令和4年度税制改正において、令和5年分以後の「財産債務調書」の提出義務者・提出期限などについて見直しが行われたことによるものです。
見直しの中心事項としては、財産債務調書の提出義務者に「その年の12月31日において、その合計額が10億円以上の財産を有する方」が追加されたという点です。従来の提出義務者には、「その年分の退職所得を除く各種所得の金額の合計額が2,000万円を超える場合」という所得基準が設けられていました。この所得基準があったことにより、例えば、特定口座の上場株式等を有していて、配当金や売却益が2,000万円を超えて発生していたとしても、特定口座で源泉徴収有りを選択していた場合には、確定申告不要を選択することが可能で、結果的に所得金額として計上されず、財産債務調書が提出されないケースが散見していました。
そこで、令和4年度の税制改正において、従来の提出義務者の判定は残した上で、追加で「その年の12月31日において、その合計額が10億円以上の財産を有する方」という財産金額のみで判定する考え方が導入されました。
一方で、財産金額のみによる基準が追加されたことに伴い、確定申告書を提出しない納税者が財産債務調書のみを提出する場面も想定されるため、提出期限がその年の3月15日から6月30日に後倒しされることになりました。また、これらの改正に伴い、金額基準などにおいて、記載の簡略化が図られることとなりました。
以上をまとめたものが下記のとおりです。
<「相続税の申告書等の様式一覧」および「相続税の申告のしかた」について>
令和4年7月1日、国税庁のウェブサイトに、令和4年の路線価が公表されました。路線価に関するニュースは別の様々なところで取り上げているので本稿では割愛するが、例年、この路線価の公表を待って、令和4年に発生した相続税の申告が可能となります。
そして、毎年同日付で「相続税の申告書等の様式一覧」および「相続税の申告のしかた」も公表されます。
今回は、「相続税の申告書等の様式一覧」および「相続税の申告のしかた」のうち、令和4年分用として主に変更となったところを紹介します。
(1)相続税の申告書等の様式一覧
相続税の申告書は、第1表から第15表までで構成されていますが、国税庁のウェブサイトにおいては、相続時精算課税適用者又は相続税の納税猶予等の特例の適用を受ける人がいない場合を「一般」の場合と定めていて、「一般用」として、下記のものが挙げられています。
第1表 相続税の申告書 平成31年1月分以降用
第1表(続) 相続税の申告書(続) 平成31年1月分以降用
第1表控用 相続税の申告書控用 平成31年1月分以降用
第1表(続)控用 相続税の申告書(続)控用 平成31年1月分以降用
第2表 相続税の総額の計算書 平成27年分以降用
第4表 相続税額の加算金額の計算書 令和3年4月分以降用
第4表の2 暦年課税分の贈与税額控除額の計算書 平成31年1月分以降用
第5表 配偶者の税額軽減額の計算書 平成21年4月分以降用
第6表 未成年者控除額・障害者控除額の計算書 平成27年分以降用
令和4年4月分以降用
第7表 相次相続控除額の計算書 平成21年4月分以降用
第8表 外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書 平成31年1月分以降用
第9表 生命保険金などの明細書 平成21年4月分以降用
第10表 退職手当金などの明細書 平成21年4月分以降用
第11表 相続税がかかる財産の明細書(相続時精算課税適用財産を除きます。)
令和2年4月分以降用
第11・11の2表の付表1 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書
令和2年4月分以降用
第11・11の2表の付表1控用 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書控用
令和2年4月分以降用
第13表 債務及び葬式費用の明細書 令和2年4月分以降用
第14表 純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額・出資持分の定めのない法人などに遺贈した財産・特定の公益法人などに寄附した相続財産・特定公益信託のために支出した相続財産の明細書 令和2年4月分以降用
第15表 相続財産の種類別価額表 令和2年4月分以降用
第15表(続) 相続財産の種類別価額表(続) 令和2年4月分以降用
第15表控用 相続財産の種類別価額表控用 令和2年4月分以降用
第15表(続)控用 相続財産の種類別価額表(続)控用 令和2年4月分以降用
以上のように、様式の変更点としては、第6表の「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」の一点のみです。これは、民法改正より、成人年齢が令和4年4月1日から18歳以上(それまでは20歳以上)に引き下げられたことに伴うものであり、相続税法上も、未成年者控除額の適用要件が20歳までではなく18歳までに引き下げられました。この措置が4月1日から施行されているため、「1月1日から3月31日までの相続発生分」と「4月1日から12月31日までの相続発生分」に分かれています。
(2)相続税の申告のしかた
「相続税の申告のしかた」については、下記の内容から構成されています。
* 目次・はじめに【必ずお読みください】
* 相続税のあらまし
* 相続税の申告
* 相続税の納付
* 相続税の申告書の記載例 等
*(参考)相続税の申告の際に提出していただく主な書類
こちらもやはり大きな変更点は、未成年者控除についてです。これについては、「相続税の申告のしかた」の12頁で詳細に紹介されています。
なお、民法改正による成人年齢の引き下げは、贈与税にも大きな影響があります。これらを一覧にしたのが以下のとおりです。ただ、贈与税は暦年単位課税であるため、令和4年分の確定申告期間は、令和5年2月1日から令和5年3月15日の予定です。
※国税庁ウェブサイト
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0022004-004.pdf参照
また、「相続税の申告のしかた」については、巻末に参考として、「相続税の申告の際に提出していただく主な書類」があり、いわゆる「個人版事業承継税制」および「法人版事業承継税制」についての提出書類チェックシートが令和4年分用にアップデートされています。これらの適用を検討している方は併せてご確認ください。
<申告書等の情報の取得について>
令和4年5月23日に、国税庁のウェブサイトに「申告書等情報取得サービスが始まりました(申告書等の情報の取得について)」と題した内容が掲載されました。
税務署に提出した申告書や届出書は、「申告書等閲覧サービス」という制度により、税務署に訪問すれば閲覧することは可能でした。
一方で、新型コロナウィルス感染症拡大の影響に伴う各種給付金等の支給に際して、特に個人において、過去に申告済みの確定申告書等の提出を求められる場面が急増しています。
このような中で税務署に訪問することなく、国税庁の「e-Taxソフト(WEB版・SP版)」にログインすることで、申告済みの確定申告書を入手できる方法が示されました。
特に特徴的なのが、本サービスが電子申告のみでなく書面申告している場合でも、手数料がかからずに、PDFファイルを取得できる「申告書等情報取得サービス」として提供されている点です。
本サービスの対象となるものは、書面又はe-Taxにより提出した下記の申告書等のうち、直近3年分(令和2年分以降)です。
① 所得税及び復興特別所得税確定(修正)申告書
② 青色申告決算書
③ 収支内訳書
留意点としては、利用に際してマイナンバーカードが必要な点、申請からPDFファイルの取得までには数日かかりPDFファイルのダウンロード可能期間は、メッセージの格納から180日以内という点、さらに、税理士等の代理人や相続人の方は利用できない点などです。
詳しい操作方法等は、下記URLの国税庁ウェブサイトをご参照ください。
https://www.e-tax.nta.go.jp/shutoku-service/index.htm
また、「申告書等閲覧サービス」は従来どおり、税理士等の代理人や相続人でも利用は可能です。直接税務署に訪問する必要はありますが、過去の申告書等の提出の有無等を確認する際は、引き続き、本サービスもご利用ください。
<直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置について>
令和4年5月27日に、国税庁のウェブサイトに『「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」のあらまし』が公表されました。
住宅取得等資金の非課税措置については、世代を超えて資産移転を図る制度として、受贈者が居住用の不動産(マイホーム)を取得する際に、直系の父母や祖父母から一定の資金援助を受けた場合に非課税とする措置であり、令和4年度の税制改正において、要件に多少の変更があったものの制度そのものは延長されました。
具体的には、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等(以下「新築等」という)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」という)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、下記表の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となるものです。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0022005-028.pdf
今回の新しい非課税措置(新非課税制度)の特徴として、この贈与税の非課税限度額を「贈与の時期」で判断するという点です。
令和3年までの非課税措置は、「贈与の時期」ではなく、「住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日」において判断していました。これは、消費税の増税の影響があったためであるといわれています。消費税率が、令和1年10月1日から8%から10%となっていますが、経過措置として、半年前の平成31年3月31日までに住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結をしていれば、令和1年10月1日以降の引き渡しの物件であっても消費税率8%での経過措置が認められていました。そして、この経過措置に伴い、以前の贈与税の非課税限度額も下記の表のとおり、消費税率10%での取引となるかどうかによって異なっていました。下記の表の(2)について、「平成31年4月1日~」とあり、実際の税率が10%になった「令和1年10月1日~」となっていないのは、本経過措置の影響によるものです。
<受贈者ごとの非課税限度額(注1)>
(注1)非課税限度額
受贈者ごとの非課税限度額は、新築等をする住宅用の家屋の種類ごとに、受贈者が最初にこの制度の適用を受けようとする住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日に応じた金額です。
(注2)住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率
個人間の売買で、建築後使用されたことのある住宅用の家屋(中古住宅)を取得する場合には、原則として消費税等がかからないため、上記(2)の表には該当しません。
(注3)住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日
この制度の適用を受けるためには、令和3年12月31日までに贈与により住宅取得等資金を取得するだけではなく、住宅用の家屋の新築等に係る契約を同日までに締結している必要があります。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0021005-083_04.pdf
今回の大きな税制改正の変更点は、この贈与税の非課税限度額の判断時期です。それ以外の要件については大きな変更は生じていないため、是非、国税庁の本あらましを参照して、有効に特例措置をご活用ください。
<「事業承継・引継ぎ補助金」について>
「令和3年度補正予算の事業承継・引継ぎ補助金」のウェブサイト上、令和4年4月22日に「専門家活用事業」について、同28日に「廃業・再チャレンジ事業」についての申請受付開始の情報が発表されました。
「事業承継・引継ぎ補助金」は、事業再編、事業統合を含む事業承継を契機として経営革新等を行う中小企業者・小規模事業者に対して、その取組に要する経費の一部を補助することを目的としており、さらに、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎに要する経費の一部を補助する事業を行うことにより、事業承継、事業再編・事業統合を促進し、我が国経済の活性化を図ることを目的とする補助金です。
この補助金の特徴は、大きく下記の3類型から構成されていて、その中でさらに分類が分かれています。
1.事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)
①創業支援型
②経営者交代型
③M&A型
2.事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)
①買い手支援型
②売り手支援型
3.事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)
特に、今回の令和3年度補正予算の事業承継・引継ぎ補助金では、再チャレンジに取り組むための廃業に係る経費の一部を補助する事業として、「3.の廃業・再チャレンジ事業」が新設されている点がポイントです。本事業は、「1.の経営革新事業」および「2.の専門家活用事業」との併用申請が可能であるほか、M&Aへの取り組み後に廃業した際には廃業・再チャレンジ事業単独での申請も可能です。
なお、どの類型においても、交付申請に際しては、経済産業省が運営する補助金の電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」を利用する必要があり、その利用にあたっては、「gBizIDプライム」アカウントが必要です。
具体的な各補助金の交付までの流れは、次図のとおりです。
※「事業承継・引継ぎ補助金」のウェブサイト(https://jsh.go.jp/r3h/)参照
令和3年度の当初予算の「事業承継・引継ぎ補助金」については、令和3年9月30日から令和3年10月26日まで公募が行われています。
外部審査委員会による厳正な審査の結果、「経営革新事業」については136件の申請に対して75件(採択率55.1%)が、「専門家活用事業」については270件の申請に対して236件(採択率87.4%)が、交付決定されています。
一方、「事業再構築補助金」の採択結果は、下記のとおりです。
第一回 応募件数22,231件に対して8,016件(採択率36.0%)
第二回 応募件数20,800件に対して9,336件(採択率44.8%)
第三回 応募件数20,307件に対して9,021件(採択率44.4%)
第四回 応募件数19,673件に対して8,810件(採択率44.7%)
採択率でいうと、「事業承継・引継ぎ補助金」は比較的高いことがいえます。上記図の流れや申請要件を丁寧に確認して、該当する場合には是非チャレンジしてみることを推奨します。
<「事業承継ガイドライン」の改定について>
令和4年3月17日に経済産業省のウェブサイトに「事業承継ガイドライン」の改定について公表されました。
「事業承継ガイドライン」は中小企業庁が平成28年に公表していましたが、その後、法人版事業承継税制の特例措置や個人版事業承継税制の創設や、足下で長期化している新型コロナウイルス感染症の影響もあり、状況が一変しています。
こうした状況を踏まえて円滑な事業承継をより一層推進するため、「事業承継ガイドライン」を改訂し、前回改訂時以降に事業承継に関連して生じた変化や、新たに認識された課題と対応策等を反映されています。
特に、今回の改定で注目すべき点として、新たに「事業承継に関する支援策一覧」を別冊で用意した点です。この支援策(一覧)は、「事業承継・M&Aに関する支援策フロー」で全体像を示し、そのうえで、①親族内承継に関する支援策一覧、②従業員承継に関する支援策一覧、③M&Aに関する支援策一覧を「現経営者」と「後継者候補(譲受側候補)」のそれぞれの立場からフローとして明示していて大変分かりやすい内容となっています。そして、その後に下記内容について概略が紹介されています。
1. 事業承継・引継ぎ支援センター
2. 後継者人材バンク
3. 事業承継・引継ぎ補助金
4. M&A支援機関登録制度
5. 中小企業経営力強化支援ファンド
6. 法人版事業承継税制(一般措置・特例措置)
7. 個人版事業承継税制
8. 経営資源集約化税制
9. 登録免許税・不動産取得税の特例
10.公庫融資・信用保証の特例(金融支援)
11.経営者保証ガイドライン
12.事業承継時の経営者保証解除支援
13.遺留分に関する民法の特例
14.所在不明株主に関する会社法の特例
15.事業承継ガイドライン
16.中小M&Aガイドライン
17.中小M&Aハンドブック
18.中小PMIガイドライン
19.事業承継診断
20.ローカルベンチマーク(略称:ロカベン)
21.経営デザインシート
経済産業省(中小企業庁)参照リンク先:
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_shien.pdf
これらの内容について、参照リンク先やQRコードがついているため、それぞれの場面に応じて、さらに深堀して内容が確認できるようになっています。
中小企業の経営者年齢の分布が、2020年時点において、その年齢が多い層から「60歳~64歳」、「65歳~69歳」、「70歳~74歳」に分散していて、2000年時点の最も多い層「50歳~54歳」から高齢化している状況です。また、廃業予定企業の廃業理由の約29.0%が「後継者難による廃業であるという統計も出ています。
後継者へ移行する期間は平均3年以上かかるという統計も約51.9%を占めており、事業承継に関する課題は喫緊の課題であるともいえます。
今回改定された 「事業承継ガイドライン」を参照して、是非早急に準備していくことが肝要です。
<民法の改正(成年年齢引下げ)に伴う贈与税・相続税の改正について>
令和4年4月15日に国税庁ウェブサイトに「民法の改正(成年年齢引下げ)に伴う贈与税・相続税の改正のあらまし」が公表されました。
民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立したのは、今から約4年前の平成30年6月13日でした。民法の定める成年年齢の見直しは、この明治9年の太政官布告以来、約140年ぶりであり、18歳、19歳の若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備するとともに、その積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義を有するものと考えられています。また、女性の婚姻開始年齢は16歳と定められており、18歳とされる男性の婚姻開始年齢と異なっていましたが、今回の改正では、女性の婚姻年齢を18歳に引き上げ、男女の婚姻開始年齢を統一しています。このように社会への影響が大変大きいものであったため、公布から施行までの期間に約4年という間を設けていました。
それでは、今回の成年年齢引下げによる民法の改正は、贈与税や相続税にはどのような影響があるのでしょうか。贈与税については受贈者の年齢要件、相続税については相続人の年齢要件と関連することとなりますが、その具体的な内容は下記の図の通りです。
今まで20歳とされていたものが18歳となる点は容易に判断できますが、年齢要件で大切なのは、いつの時点における年齢でみるのかという点です。例えば、「住宅取得等資金の非課税措置については、「その年1月1日において」とあります。よって、贈与時点ではない点に注意する必要があります。
他にも「あらまし」では、具体的に下記三点についてQ&A形式で紹介されています。
いずれも、令和4年3月31日以前の贈与・相続等の場合なのか、令和4年4月1日以後の贈与・相続等の場合なのかを判断して考える必要があります。
令和4年の贈与税の申告の際に慌てないためにも、事前に年齢要件等を丁寧に確認して、贈与の実行などを行うことが肝要です。
<令和4年度税制改正法案の成立について>
令和4年度の税制改正法案が3月22日に参議院本会議で可決され、国会で成立しました。
成立した税制改正法には、所得税法や法人税法、相続税法、租税特別措置法など国税の改正を一本にまとめた「所得税法等の一部を改正する法律案」、地方税の改正を一本にまとめた「地方税法等の一部を改正する法律案」があります。
国税に関する税制改正法案(所得税法等の一部を改正する法律案)は、1月25日に閣議決定後、同日国会に提出され、2月22日に衆議院を通過しました。一方、地方税に関する税制改正法案(地方税法等の一部改正する法律案)は、1月28日に閣議決定後、同日国会に提出され、国税と同じく衆議院を2月22日に通過しています。
今回は改めて、令和4年度の主な税制改正項目について、税目ごとに紹介します。
(1)所得税:住宅ローン控除制度
住宅ローン控除の適用期限を4年間延長します。
(令和7年12月31日までに入居した者が対象です。)
・2050年カーボンニュートラルの実現に向けた措置が行われます。
省エネ性能等の高い認定住宅等(※1)につき、新築住宅等・既存住宅ともに、借入限度額を上乗せし、令和6年以降に建築確認を受けた新築住宅につき、省エネ基準への適合を要件化します。
・会計検査院の指摘への対応と当面の経済状況を踏まえた措置等があります。
会計検査院の指摘への対応として控除率を0.7%(現行:1%)としつつ、新築住宅等につき控除期間を13年へと上乗せします。(※2)
・その他の要件
住宅ローン控除の適用対象者の所得要件は合計所得金額2,000万円以下(現行:3,000万円以下)とし、合計所得金額1,000万円以下の者につき、令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅の床面積要件を40㎡以上に緩和となります。
※1 「認定住宅等」は、認定長期優良住宅・認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ宅、省エネ基準適合住宅のことを指します。
※2 控除期間につき、新築等の認定住宅等については令和4~7年入居につき13年とし、新築等のその他の住宅については令和4・5年入居は13年、令和6・7年入居は10年とし、既存住宅については令和4~7年入居につき10年とします。
※3 「買取再販住宅」は、既存住宅を宅地建物取引業者が一定のリフォームにより良質化した上で販売する住宅のことを指します。
※4 「その他の住宅」は、省エネ基準を満たさない住宅のことを指します。
※5 既存住宅における築年数要件(耐火住宅25年、非耐火住宅20年)については廃止し、代わりに昭和57年以降に建築された住宅を対象とします。
※6 所得税額から控除しきれない額については、所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)の範囲内で個人住民税から控除します。
(2)贈与税:住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
非課税限度額を下記のとおり見直した上で、適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年延長します。
※1 上図は、耐震性能・省エネ性能・バリアフリー性能のいずれかを有する住宅向けの非課税限度額です。それ以外の住宅の非課税限度額はそれぞれ500万円減となりました。
※2 受贈者の年齢要件:20歳⇒【改正】年齢要件を18歳以上に引下げとなりました(令和4年4月以後)
※3 既存住宅は、①築年数が20年(耐火建築物は25年)以内又は②耐震基準に適合していることが必要です。
⇒【改正】築年数要件を撤廃し、昭和57年以降に建築された住宅又は耐震基準に適合していることが証明された住宅を対象とします。
※4 東日本大震災の被災者に係る非課税限度額は、令和3年12月末まで1,500万円(耐震・エコ・バリアフリー以外の住宅は1,000万円)で据置きです。
⇒【改正】令和5年12月末まで2年延長します。
(3)法人課税:積極的な賃上げ等を促すための措置
<大企業等>
・積極的な賃上げを促す観点から、継続雇用者の給与総額を一定割合以上増加させた企業に対して、雇用者全体の給与総額の対前年度増加額の最大30%を税額控除できる制度とします(2年間の時限措置)。その際、一定規模以上の大企業に対しては、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組みを宣言していることを要件とします。
・賃上げや人材投資(教育訓練費)に積極的な企業に対しては、税額控除率を上乗せします。
※1 資本金10億円以上、かつ、常時使用従業員数1,000人以上の大企業に対する要件とし、自社のウェブサイトに宣言内容を公表したことを経済産業大臣に届出が必要です。
※2 確定申告書に教育訓練費の明細書の添付(改正:明細書の保存)が必要です。
※3 控除率10%の上乗せ措置の適用を受けない場合は、合計20%です。
<中小企業>
・中小企業全体として雇用を守りつつ、積極的な賃上げや人材投資を促す観点から、控除率の上乗せ要件を見直すとともに、控除率を最大40%に大胆に引き上げた上で、適用期限を1年延長します(令和6年3月31日)。
※1 教育訓練費増加等の要件:次のいずれかの要件があります。
①教育訓練費の対前年度増加率10%以上
確定申告書に教育訓練費の明細書の添付(改正:明細書の保存)が必要です。
②中小企業等経営強化法の認定経営力向上計画における経営力向上の証明(改正で廃止)が必要です。
※2 控除率15%の上乗せ措置の適用を受けない場合は、合計25%です。
(4)法人課税:オープンイノベーション促進税制の拡充
ベンチャー企業と既存企業の協働によるオープンイノベーションを促進する観点から、対象となる一定のベンチャー企業の設立経過年数の要件や特別勘定の取崩しが不要となる株式保有期間等の見直しを行った上で、適用期限を2年間延長します(令和6年3月31日)。
<適用対象となる一定のベンチャー企業の株式>
オープンイノベーション性等の要件を満たすベンチャー企業に対する出資の払込みとして経済産業大臣が証明(※)したものにより取得した株式であることが適用対象です。
※出資後に企業から提出を受けた資料を、経済産業省において確認し、出資した年及び特定期間(出資後5年間【改正:3年間】)中、経済産業大臣が証明されたことが必要です。
(5)法人課税:5G導入促進税制の見直し
「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、地方でのネットワーク整備を加速する等の観点から、インセンティブ付けのため税額控除率を段階的に引き下げること等とした上で、適用期限を3年間延長します(令和7年3月31日)。
(6)消費課税:自動車重量税におけるキャッシュレス納付制度の創設
規制改革実施計画(令和3年6月18日閣議決定)を踏まえ、申請者利便の更なる向上を図るため、自動車重量税の納付方法について、クレジットカードによる納付も可能とします。(令和5年1月~導入予定)
以上は各税目についてですが、これ以外にも、「税理士制度の見直し」や「記帳義務を適正に履行しない納税者等への対応策」、「財産債務調書制度の見直し」などが掲げられています。例年の流れだと、6月ごろに通達も整備されるため、引き続き、改正の動向にご注意ください。
<e-Taxの接続障害への対応について>
令和3年分の所得税および贈与税の確定申告期限が令和4年3月15日(火)でありましたが、3月14日(月)から3月15日(火)にかけて、e-Taxの接続障害が断続的に発生し、e-Taxにログインができない、ログインができても送信ができないまたは送信に時間を要するなどの事態が生じました。
これについて、国税庁では、下記のとおり対応を取るとの発表がなされています。
(1) 申告期限の取扱い等
本障害により、期限内の申告等が困難となった場合には、個別に申告期限等(申告・納付・法定提出期限)を延長することとし、後日、申告書等を提出する場合の具体的な手続方法(申告書等に「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」である旨記載するなど)が示されました(下記リンク先参照)。
今般、e-Taxの処理状況が改善したことを踏まえ、令和4年3月18日(金)までに申告期限等を迎える申告等について、上記の手続方法により期限延長を行う期間を令和4年4月15日(金)までとするとされました。
(2) 令和3年分所得税の青色申告特別控除の取扱い
現在、青色申告特別控除の65万円控除を受ける場合には、55万円の青色申告特別控除の要件を満たした上で、e-Taxによる申告または電子帳簿保存法の承認を受けて電磁的記録による保存を行う必要があります。
今回のe-Taxの接続障害により、e-Taxによる申告書の提出ができなかった方について、65万円の青色申告特別控除を受ける場合の手続については、下記のいずれかにより令和4年4月15日(金)までに延長申請すれば、適用を受けられることになります。
① 3月15日(火)までに申告書を提出できなかった納税者
申告書に、「e-Taxの障害による申告・納付期限の延長申請」である旨を記載して、e-Taxにより提出することで、期限内に提出された確定申告書として扱われます。
② 3月15日(火)までに申告書を書面で提出した納税者
①と同様に、申告書に、「e-Taxの障害による申告・納付期限の延長申請」である旨を記載して、e-Taxにより提出します。この場合、後から提出された申告書を期限内に提出された確定申告書として扱われます。
(3) 預貯金口座からの振替日
今回のe-Taxの接続障害により、令和4年4月15日(金)までに個別に申告期限等を延長した場合の申告所得税の預貯金口座からの振替日は、令和4年5月31日(火)となります。
ただし、消費税(個人事業主)については、期限延長の対象とはならないため留意が必要です。また、贈与税についても口座振替自体が存在しないので、納付書等により納税をする必要がありますので、併せて留意する必要があります。
<特定生産緑地制度について>
生産緑地とは市街化区域内の指定された農地をいい、生産緑地制度は、良好な生活環境の確保に効用があり、公共施設等の敷地として適している500㎡以上の農地を都市計画に定め、建築行為等を許可制により規制し、都市農地の計画的な保全を図る制度です。
現在、三大都市圏の市街化区域内農地の約5割を生産緑地が占めていて、2022年には、生産緑地地区のうち、面積ベースで概ね8割にあたる生産緑地が、指定から30年が経過します。これは、下記の図を見れば明らかです。
生産緑地の指定解除がされると、どのようになるのでしょうか。実は、税制と大きな関係があります。具体的には、生産緑地の指定解除がされると、固定資産税の課税が「農地課税」から「宅地並み課税」となり、5年間の激変緩和措置があるとはいえ、固定資産税の課税が比べ物にならないぐらい上がってしまうというリスクが生じます。
このように、生産緑地は固定資産税の課税に大きな影響があると共に、都市計画決定から30年が経過する日以後、所有者が、市町村長に対し、いつでも買取りの申出をすることができるようになることから、都市計画上も不安定な状態に置かれることになります。
このため、平成29年に生産緑地法を改正し、申出基準日が近く到来することになる生産緑地について、市町村長が、農地等利害関係人の同意を得て、申出基準日より前に特定生産緑地として指定し、買取りの申出が可能となる期日を10年延期する制度を創設し、平成30年4月1日より施行しているところです。
これにより、申出基準日以後も、引き続き生産緑地が保全され、良好な都市環境の形成が図られることが期待されます。全国的に多くの都市が人口減少局面に移行し、宅地需要が沈静化しつつある中、農地の転用により住宅供給等を推進する必要性は低下しています。また、生産緑地は身近な農業体験の場や災害時の防災空間などとして多様な機能を発揮するグリーンインフラとして、都市における重要な土地利用です。
これらを踏まえ、特定生産緑地制度を積極的に活用し、申出基準日以後も引き続き、生産緑地の保全を図っていくことが、今後の持続可能な都市経営や都市住民の豊かで潤いのある生活環境の保全・創出につながるといえます。
また、上記図のとおり、特定生産緑地として指定を受けると、固定資産税の課税も引き続き「農地課税」となるため、維持管理費が今までと同水準を維持することが可能となります。
実際、多くの生産緑地所有者が、この特定生産緑地の指定を受けて、引き続き農地として利用を検討しているといいます。
一方で、この特定生産緑地の指定を受けることなく、宅地に転用して、アパート等の収益不動産を建築することや、土地そのものを売却するケースも想定されます。この場合に注意しなければならないのが、過去に相続税の納税猶予制度を受けているかどうかについてです。当該土地が相続税の納税猶予制度の適用を受けている場合には、「終身営農」が要件となっているため、宅地に転用した途端に、猶予も終了となり、納税猶予の対象となっていた相続税の本税と利子税を一時に納付する必要が発生してしまいます。
相続税の納税猶予制度を先代以前の時期に適用していた場合でも、原則として「終身営農」が求められることから、もしも指定解除を検討している場合には、過去の相続税の納付状況を確認することや、全部事項証明書に担保として差し出されていないかどうかを確認して、慎重に見極める必要があります。
<事業復活支援金について>
2022年1月18日に、「事業復活支援金」のサイトが立ち上がりました。これは、新型コロナウイルス感染症拡大が確認された2020年に、その支援策として打ち出された「持続化給付金」と類似するものですが、不正受給などが相次いだため、要件を厳格化したうえで、改めて支援策として打ち出されたものです。
その具体的な要件は、下記のとおりです。
・申請期間
2022年1月31日~5月31日
・給付対象
下記の①と②を満たす「中小法人・個人事業者」が、給付対象となり得ます。
① 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者
② 2021年11月~2022年3月のいずれかの月(対象月)の売上高が、
2018年11月~2021年3月の間の任意の同じ月(基準月)の売上高と比較して
50%以上または30%以上50%未満減少した事業者
・給付額
基準期間(※1)の売上高-対象月の売上高×5か月分
※1 2018年11月~2019年3月
2019年11月~2020年3月 のいずれかの期間(基準月を含む期間)
2020年11月~2021年3月
この要件の中で、給付対象の「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者」についての判断が難しいということもあり、具体的に下記のような事例があがっています。
逆に、新型コロナウイルス感染症の影響とは関係ない下記の場合は、給付対象とはならないと明記されています。
・実際に売上が減少したわけではないにも関わらず、通常事業収入を得られない時期(事業活動に季節性があるケース(例:夏場の海水浴場)における繁忙期や農産物の出荷時期以外など)を対象月とすることにより、算定上の売上が減少している場合
・売上計上基準の変更や顧客との取引時期の調整により売上が減少している場合
・要請等に基づかない自主的な休業や営業時間の短縮、商材の変更、法人成りまたは事業承継の直後などで単に営業日数が少ないこと等により売上が減少している場合
これらの要件は、2020年の「持続化給付金」申請の際の要件には無かったもので、その判断に悩むケースも想定されます。
この点については、今回の申請の流れで大きな特徴の一つである「登録確認機関」が重要な役割を果たすと考えられます。
今回の「事業復活支援金」については、その申請に際して、必ず「登録確認機関」の事前確認を要することとなっています。「持続化給付金」の際に不正受給が横行したため、客観的な第三者による事前確認を求めるという要件を追加しているということです。
「登録確認機関」については、下記リンク先から検索することも可能です。
「事業復活支援金」については、以上確認してきたように、申請期間が極めて短いため、該当する中小法人や個人事業者等については、早めに準備を進めることが肝要です。
<令和3年分の所得税等の確定申告について>
令和4年2月3日、国税庁ウェブサイトにおいて、「新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限までの申告等が困難な方へ」についての案内が公表されました。
オミクロン株による新型コロナウイルスが猛威を奮い、各都道府県において、蔓延防止等重点措置が発令されています。このような中、これから本格的に確定申告手続きが始まるにあたって、特に高齢者を中心に確定申告を申告期限内に終えることが困難であることが想定されます。
そこで、令和3年分の確定申告について、新型コロナウイルス感染症の影響により申告等が困難な方について、令和4年4月15日までの間、簡易な方法により申告・納付期限の延長を申請することができるようになりました。
簡易な方法というのは、期限後に申告が可能となった時点で、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出せずに、確定申告書の指定箇所等に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載すれば足りるとする方法です。
具体的には、令和元年分の確定申告の最延長の際に採られた方法と同様であり、以下のように、確定申告書の右上の余白に、記載することになります。
なお、対象となる税目は、令和3年分の申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税であり、令和4年1月以降に申告期限がくるものが対象です。
ただし、令和3年12月以前に申告期限がくる令和2年分については、この簡易な方法による方法は採用されておらず、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出しないと延長申請が認められないため、留意が必要です。
参考までに、令和元年以降分の取扱いをまとめると下記のとおりです。
※令和元年分の所得税等の当初の申告期限は、暦の関係から実際には、令和2年4月16日でした。
以上のように、新型コロナウイルス感染症拡大が長期間にわたり継続している状況ではありますが、各年により取扱いが微妙に異なるため、特に令和3年分についての確定申告に際しては、今後も国税庁ウェブサイトなどを確認するなどしてご注意ください。
<国税庁の「タックスアンサー」について>
令和4年1月4日、国税庁ウェブサイトにおいて、タックスアンサー(よくある税の質問)のページ改修についての案内が公表されました。
個人の確定申告が、これから本格的に始まるにあたって、税金について調べる際の手がかりとして大変有効なのが、このタックスアンサーです。
今回の改修の特徴は、探し方として「自分に合った状況から探す」、「キーワードから探す」、「分野から探す」および「一覧から探す」の大きく4つに分類されている点です。
「キーワードから探す」や「一覧から探す」については、今までと変わりませんが、「自分に合った状況から探す」と「分野から探す」というのが新設されています。
そして、それぞれを選択すると、以下のとおり、「Q2 何に関する情報を知りたいですか」が出てきます。
それぞれを選択すると、さらに「Q3 どのような状況について知りたいですか」が出てきて、それぞれを選択すると最後に「Q4 税目等について選んでください」が出てきます。
そして、最後に「Answer」として、具体的なタックスアンサーの番号が出てくる流れです。
「キーワードから探す」だと、本来個人の所得税について調べたいのに、法人税のタックスアンサーが出てきてしまうこともありますが、この探し方であれば、ほぼ調べたい項目にたどり着くことができ、大変便利な機能です。
また、「分野から探す」についても以下のとおり、イラストも入っていて、大変見やすく刷新されています。
タックスアンサーで調べる利点は、参照条文が記載されている点です。税理士などの専門家であれば、原典を簡単に調べることができ、また、関連する内容のタックスアンサーも紹介されているため、周辺部分を調べることも可能です。
タックスアンサーを利用して、適切な税務申告をして頂ければ幸甚です。
<「令和3年分 確定申告特集」について>
令和4年1月4日、国税庁ウェブサイトに「令和3年分 確定申告特集」が公表されました。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、令和元年分の所得税の確定申告期限は、期日を設けない特例の猶予が設けられ、また、令和2年分の所得税の確定申告期限は、令和3年4月15日に1ヵ月間延長されました。令和3年分の所得税の確定申告期限は、現状においては、通常の申告期限である令和4年3月15日でありますが、新たなオミクロン株の流行などにより、今後、期限猶予の特例が設けられる可能性はあります。
ただ、ウィズコロナの社会ができあがりつつある中、期限猶予の延長はないものとして、3月15日に向けて申告の準備を進めていくのが肝要です。
このような中、税務署での対面による書面申告から電子申告による確定申告を普及すべく、いわゆるスマホ申告という、スマホ一つで電子申告ができる体制が整っています。
不動産の譲渡所得等は、依然としてスマホ申告では対応していませんが、株式等の譲渡所得のうち、特に上場株式等については、証券会社において特定口座を開設している場合、特定口座年間取引報告書を証券会社が作成してくれるため、すでに集計が完了している状態となっています。上場株式等の配当等や譲渡等については申告不要も選択できますが、他の証券会社において譲渡損が発生している場合などは、確定申告を行うことで天引きされていた源泉所得税等が還付されることとなります。また、譲渡損を最大3年間繰り越すことも可能であり、当該繰越についてもスマホで対応できるようになる予定です。
もちろん、こういった上場株式等を所有していなかったとしても、いわゆる年金所得と医療費控除の組み合わせや、給与所得と寄付金控除(ふるさと納税)の組み合わせなどもスマホで対応可能です。
オミクロン株が猛威を奮っている状況下において、ぜひ積極的にこれらの電子申告を有効に活用お願いいたします。