事務所名 | 分銅会計事務所 |
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所長名 | 代表税理士 分銅雅一 (登録番号第123843号) |
所在地 | 〒160-0022 |
電話番号 | 03-6380-1093 |
FAX番号 | 03-6380-1094 |
業務内容 | 自社株式と不動産の承継に関連する 1.相続税・譲渡所得税の税務申告 2.相続・事業承継対策の立案及び実行支援 3.個人及び法人の税務顧問 4.セミナー及び研修の講師 |
適格請求書発行事業者登録番号 |
<令和2年分 相続税の申告事績の概要について>
令和3年12月16日、国税庁ウェブサイトに「令和2年分 相続税の申告事績の概要(令和3年12月)」が公表されました。
それによると、令和2年分における被相続人数(死亡者数)は1,372,755人(前年対比99.4%)でありますが、そのうち相続税の申告書の提出に係る被相続人数は120,372人(同104.4%)で、その課税価格の総額は16兆3,937億円(同103.9%)、申告税額の総額は2兆915億円(同105.9%)でありました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、日本においても執筆時点で18,375人の死亡が確認されていますが、感染症拡大と申告事績との因果関係はほぼないといって良いかと思われます。
昨年分との比較については、下図のとおりです。
(注)
このうち、「③課税割合」については、下図の「課税割合の推移」からも分かるとおり、平成27年1月1日以降の相続分から基礎控除が4割り引き下げになった影響で、それまでは約4%強であったものが、一気に倍増して8%強になっています。
また、「②相続税の申告書の提出に係る被相続人数」の「本」書(令和2年分は120,372人)は、相続税額のある申告書に係る計数を示し、「外」書(令和2年分は32,651人)は相続税額のない申告書に係る計数を示しています。相続税額ない申告書というのは、相続税の課税価格の合計額は基礎控除額を超えるものの、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を適用した結果、基礎控除を下回り、相続税額が発生していない状態を指します。これらの特例は、申告書の提出が要件となるため、相続税額のない申告書としての扱いとなっています。
ここで注目すべきは、相続税の申告書の提出人数が120,372人であるという点です。令和3年11月末日時点での税理士登録者数は79,956人です。つまり、理論上は、税理士一人当たりの相続税の申告人数は約1.5人ということになります。相続税は、土地や取引相場のない株式(自社株式)など評価が複雑なものも多く、名義財産等の確認も必要となるため、かなりの専門的な知識が求められます。
最後に令和3年度の税制改正大綱において、相続税と贈与税の一体化についての記載があり、令和4年度の税制改正大綱に具体的内容が盛り込まれるのではないかと注目されていましたが、令和3年12月10日に公表された令和4年度税制改正大綱においては、「今後本格的な検討進める」という表現に留まっており、令和5年度以降の税制改正大綱においてどのような表現で記載されていくのか、引き続き注視していく必要があります。
<「青色申告の承認の取消し」の一部改正について>
令和3年12月2日、国税庁ウェブサイトに「『個人の青色申告の承認の取消しについて』の一部改正について(事務運営指針)」および「『法人の青色申告の承認の取消しについて』の一部改正について(事務運営指針)」が公表されました。
これは、令和3年度税制改正において、電子帳簿保存法が改正されたことに伴い、電子データについては電子保存が義務化された一方で、電子保存がされていないことによって、直ちに青色申告の承認が取り消しとはならないようにするための措置です。
具体的には、個人および法人ともに、事務運営指針として「今後の改善可能性等を総合勘案の上(下記のアンダーライン部分)」が加筆されることになりました。
実際の事務運営指針の文言は、下記のとおり改められることになりました。
<電子帳簿保存法の要件に従っていない場合における青色申告の承認の取消し>
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律の要件に従っていない場合における青色申告の承認の取消しに当たっては、電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムの備付け又は保存の程度(電磁的記録に代わる書面等による備付け又は保存の有無とその程度を含む。)、今後の改善可能性等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしいと認められるかどうかを検討し、法第150条第1項の規定の適用を判断する。
この事務運営指針の変更により、改正電子帳簿保存法における電子保存要件が満たされていなかったとしても、直ちに青色申告の承認の取消しとはならないことになりました。
また、本稿執筆時の令和3年12月5日の報道機関による発表によれば、令和4年度税制改正大綱において、改正電子帳簿保存法の電子保存要件については、2年間猶予する特例を設ける予定とのことです。
これは、中小企業を中心にDX化が思うように進んでおらず、令和4年1月1日から電子保存の強制適用が間に合わないとの実務界の状況を踏まえたものと考えられます。
しかし、消費税のインボイス制度も、令和5年10月から始まる予定の中で、これらのDX化は待ったなしの状況です。令和4年度の税制改正大綱において、2年間の猶予が設けられる予定であったとしても、引き続き、電子保存を少しずつ進めることが肝要です。
<電子帳簿保存法の改正について>
令和3年度の税制改正で、電子帳簿保存法の改正がされ、令和4年1月1日から適用開始となる予定です。
国税庁のウェブサイトにおいても、令和3年11月12日に「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~」に関する「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」が掲載され、11月17日には、「電子帳簿保存法関係パンフレット・過去の主な改正」に制度の概要パンフレット(令和3年11月版)が掲載されました。
このうち、制度の概要パンフレットについては、「帳簿書類の電子化」「書類のスキャナ保存」「電子取引のデータ保存方法」について掲載されていますが、特に実務で影響が大きいと思われる「電子取引のデータ保存方法」について、概略を紹介します。
(1)保存対象となる電子データ
令和4年1月1日以降に、請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要となります。言い換えると、従来、紙でやりとりしていた場合に必要とされていた証憑書類を電子データでやりとりした場合に電子保存が必要となります。そして、この取り扱いは、紙での保存が認められずに電子による保存へと一本化される点に留意する必要があります。つまり電子データでやりとりしたものを紙で出力して紙で保存したとしても、保存要件を満たさないということです。
(2)保存方法
それでは、具体的にどのように電子保存していけばよいのでしょうか。
これについては、まず改ざん防止のための措置をとる必要がありますが、「タイムスタンプ付与」や「履歴が残るシステムの導入」といった方法以外にも「改ざん防止のための事務処理規程を定める」ような形式でも構いません。
一方、「電子保存」する際に、「日付・金額・取引先」で検索できるようにする必要があり、具体的な専用システムを導入していなくても、索引簿を作成する方法や、規則的なファイル名を設定する方法での対応も可能です。
具体的には、下記のような保存の仕方です。
(3)まとめ
今回の電子帳簿保存法の改正は、DX化の流れを受けて、紙媒体から電子媒体へと移行が進んでいく大きな契機となっていると考えられます。大会社における電子申告の義務化や電子保存の流れを受けて、今後は電子納税なども義務化されていくことも考えられます。消費税のインボイス制度も適用間近となる中で、引き続き、会計や税務の分野においても、DX化への対応は急務であると考えられます。
<法人税等の申告(課税)事績の概要(令和2事務年度)について>
令和3年11月1日、国税庁のウェブサイトに、「令和2事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要(令和3年11月)」が公表されました。令和2事務年度というのは、具体的には令和2年7月1日から令和3年6月30日までを指しています。
具体的に、法人税の申告事績、源泉所得税等の課税事績、トピックスとe-Taxの利用状況等について紹介されています。これらのうち、法人税の申告事績とe-Taxの利用状況等の概要を紹介いたします。
(1)令和2年度における法人税の申告事績の概要
令和2年度(令和2年4月1日から令和3年3月31日までの事業年度)における法人税の申告件数は301万件で、その申告所得金額の総額は70兆1,301億円、申告税額の総額は12兆1,220億円となり、前年度に比べ、それぞれ5兆1,248億円(7.9%)、5,674億円(4.9%)増加しています。
令和元年度(平成31年4月1日から令和2年3月31日までの事業年度)は、新型コロナウイルス感染症がまだ先行き不透明の中、平成30年度を下回る状況となりましたが、令和2年度は、緊急事態宣言下の中でも少しずつ経済活動が回復して、令和元年度よりも上回る状況となっています。
具体的な「法人税の申告件数等の状況」や「申告所得金額の推移」は、下記のとおりです。
なお、法人税の申告の状況の中で特筆すべきは、令和元年度において、黒字申告1件当たり所得金額が前年対比86.5%であるのに対し、赤字申告1件当たり欠損金額は113.8%となっていて、これも新型コロナウイルス感染症による影響と考えられます。
(2)e-Taxの利用状況等について
令和2年度における法人税の申告のe-Tax利用件数は242万5千件で、前年度に比べ5万6千件(2.3%)増加となり、e-Tax利用率は86.7%と、前年度に比べ1.8ポイント上昇となりました。
これは、国税庁による令和2年4月から始まった大法人のe-Tax義務化の導入に併せて、大法人はもとより、全ての法人が申告データを円滑に電子提出できるよう環境整備が一因と考えられます。
さらに、コロナ禍において、極力非対面での対応を迫られた状況も背景としてはあると考えられます。
(3)まとめ
今後の流れとして、大きな改正として、電子帳簿保存法と消費税のインボイス制度の導入が控えています。会計や税務の業界においても、電子化(DX化)がかなりのスピードで加速しているため、実務においては、これらの情報をいち早くキャッチアップして、各種制度対応の準備を進めていただきたく思います。
<短期退職手当等Q&Aについて>
令和3年10月8日、国税庁のウェブサイトに、「短期退職手当等Q&A」が公表されました。これは、令和3年度の税制改正において、役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下である者に対する退職手当等について、その退職所得金額の計算方法が改正されたことによるものです。
本改正は、令和4年1月1日から施行される予定ですが、今回は、改正の概要と短期退職手当等について概略を説明いたします。
(1)改正の概要
退職所得金額は、その年中に支払を受ける退職手当等の収入金額から、その人の勤続年数に応じて計算した退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額とされていました。
【退職所得金額の計算方法】
(退職手当等の収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2=退職所得金額
(注)特定役員退職手当等は除きます。
これが、令和3年度の税制改正により、短期勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるもので、特定役員退職手当等に該当しないものは「短期退職手当等」ということになり、その退職所得金額については、次のとおり計算することになりました。
大きなポイントとしては、収入金額から退職所得控除額を控除した金額が300万円超の場合に、その300万円を超える部分については、2分の1課税が適用されないことになった点です。
(2)「短期退職手当等」と「短期勤続年数」について
短期退職手当等とは、短期勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるもので、特定役員退職手当等に該当しないものをいいます。
この短期勤続年数とは、所得税法施行令第69条第1項第1号の規定に基づき計算した退職手当等に係る勤続期間(調整後勤続期間)のうち、役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数(1年未満の端数がある場合は、その端数を1年に切り上げたもの)が5年以下であるものをいいます。
したがって、短期勤続年数に該当するか否かは、原則として、退職手当等の支払者の下においてその退職手当等の支払の基因となった退職の日まで引き続き勤務した期間のうち、役員等以外の者として勤務した期間により計算した年数が5年以下か否かにより判定します(下記「参考図」参照)。
なお、短期勤続年数に該当するか否かの判定において、調整後勤続期間のうちに役員等勤続期間がある場合には、役員等以外の者として勤務した期間にはその役員等勤続期間を含むものとして、その判定を行います。
(3)源泉徴収税額について
退職手当等については、「退職所得の受給に関する申告書」の提出および源泉徴収税額の算出が適正に行われ、当該源泉徴収税額が天引きされていれば、確定申告時においては特に精算不要となりますが、この源泉徴収税額の算出が今回の改正によって複雑なものとなっています。
実際、国税庁のQ&Aでも[Q7]~[Q13]において、ケーススタディとして紹介されています。複数の会社から同一年に退職金の支給を受けた場合や使用人としての給与とは別に同一年に役員退職金の支給を受けた場合については、特に留意する必要があります。
(4)まとめ
今回の税制改正は、平成24年度税制改正において任期が短い役員の退職金について、2分の1課税が廃止されたことと平仄(ひょうそく)を合わせた内容となっています。高度経済成長下の時代においては、終身雇用制が前提としてありましたので、今回の改正のような事態はあまり想定されていませんでしたが、昨今は転職していくのが当然のような時代になりました。
実務においては、特に源泉徴収税額の部分が大変重要となるため、令和4年以降はご注意をお願いいたします。
<消費税のインボイス制度について>
令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入される予定です。それに先立ち、令和3年10月1日から適格請求書発行事業者の登録が開始されており、国税庁のウェブサイトで「適格請求書発行事業者公表サイト」が開設されています。今回は、改めてインボイス制度について概略を紹介します。
消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課される税であり、最終的に商品等を消費し、またはサービスの提供を受ける消費者が負担し、事業者が納付する点で間接税ともいわれます。具体的な消費税の負担と納付の流れは、下記のとおりです。
この消費税額は、原則として、課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いて(「仕入税額控除」といいます。)計算します。
現在、この仕入税額控除の要件については、「区分記載請求書等保存方式」という方式が採られていますが、令和5年10月1日から「適格請求書等保存方式」に変更される予定であり、これを通称「インボイス制度」と呼んでいます。
この「適格請求書等保存方式」の大きな特徴として、買手が仕入税額控除の適用を受けるためには、帳簿のほか、売手から交付を受けた「適格請求書」等の保存が必要となります。そして、この「適格請求書」が発行(交付)することができるのは、税務署長等の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られ、この「適格請求書」による支払いでない限り、買手側で仕入税額控除が適用できないこととなります。つまり、「適格請求書」による支払いであれば仕入税額控除が可能で、「適格請求書」でない請求書による支払については、一切、仕入税額控除が適用されないということです。
では、「適格請求書」を発行できる「適格請求書発行事業者」は、どのような者がなれるのでしょうか。
「適格請求書発行事業者」になるためには、登録申請手続が必要で、課税事業者に限って登録することが可能です。そして、その登録を受けなければ適格請求書を交付することはできません。逆にいうと、基準期間における課税売上高(一般的に2年前の売上高)が1,000万円以下の事業者については免税事業者となり、「適格請求書発行事業者」になることはできず、「適格請求書」等も発行することはできないこととなります。
新たに、開設された「適格請求書発行事業者公表サイト」では、下記のような画面で「適格請求書発行事業者」であるかどうかが瞬時に分かります。
※国税庁ウェブサイト https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/index.html 参照
こちらの画面の登録番号は、法人のマイナンバー(今後、個人事業主にも13桁のマイナンバーが個人の12桁の番号とは別で交付される予定です)を入力すれば、検索できるシステムとなっています。
今後、免税事業者からの請求書の支払いに対しては、支払側では仕入税額控除が適用できないこととなるため、課税事業者への取引先変更などの打診を受ける可能性もあります。免税事業者も課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になる手段もあるため、インボイス制度開始に向けて、入念に準備しておく必要があります。
<年末調整について>
令和3年9月、国税庁のウェブサイトに「年末調整がよくわかるページ」が掲載されました。令和3年分の年末調整は、令和2年分と大きく変わるところはありませんが、改めて概要を紹介します。
年末調整とは、源泉徴収した税額の年間の合計額と、年税額を一致させる精算の手続です。
大部分の給与所得者は、この年末調整によって、その年の所得税の納税が完了することになるため、年末調整は給与所得者にとって大切な手続の一つです。
年末調整の具体的な流れは、下記の図のとおりです。
上記表の青色部分が、受給者(従業員等)が記載して、事業者(会社)に提出するものです。
このうち、「住宅借入金等特別控除申告書」については、住宅ローンを組んでいる従業員等が、居住開始後2年目以降に提出することで、住宅ローン控除を年末調整で還付を受けるものです。
「扶養控除等申告書」は、一般的に令和3年分の記載と同時に、令和4年分のものも併せて回収することが多いです。特に、扶養控除等申告書は、2ヵ所から給与の支給を受けている場合、主たる給与の支給を受けている方でのみ提出が可能であり、この提出の有無により、源泉所得税の金額が変わるため注意を要します。
「配偶者控除申告書」や「保険料控除申告書」は、配偶者の有無および所得の状況や生命保険料および地震保険料(損害保険料)の支払い状況などを確認するためのものであり、各種所得控除の適用の有無および適用金額を、会社側が確認するために必要となるものです。
最後の「基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」については、平成30年度の税制改正により、新たに基礎控除の見直しと給与所得控除および公的年金等控除の改正により創設された所得金額調整控除制度に関するものであり、令和2年以後の所得税から適用となっているものです。
特に、基礎控除額については従来38万円であったものが、令和2年分から48万円となる一方で、所得金額が2,400万円超については段階的に控除額が下がっていく制度に変更されました。
昨年(令和2年)分の年末調整において、48万円ではなく誤って38万円を基礎控除額として控除している源泉徴収票が散見されていたため、本年分の年末調整業務に際しては、改めて留意しておく必要があります。
<住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)について>
現行の住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は、基本的に控除期間が10年ですが、一定の要件を満たした場合には、特例で13年となるケースがあります。
このうち、税制改正により「経済対策として控除期間13年の措置を延長」したものについては、その要件として、注文住宅については令和2年(昨年)10月から令和3年(本年)9月末までに契約したものに限るとされており、契約締結期限が今月末に迫っているため、留意する必要があります。
今回は、本措置を含めた住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)について説明します。
住宅借入金等特別控除とは、個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得又は増改築等(以下「取得等」といいます。)をし、令和3年12月31日までに自己の居住の用に供した場合で一定の要件を満たすときにおいて、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除するものです。
また、住宅の取得等で下記の特別特例取得(※1)又は特例特別特例取得(※2)に該当するものをした個人が、令和3年1月1日から令和4年12月31日までの間に自己の居住の用に供した場合も対象となります。
※1 「特別特例取得」とは、その住宅の取得等が特別特定取得(※3)に該当する場合で、当該住宅の取得等に係る契約が次の期間内に締結されているものをいいます。
・ 新築(注文住宅)の場合・・・令和2年10月1日から令和3年9月30日までの期間
・ 分譲住宅、中古住宅の取得、増改築等の場合
・・・令和2年12月1日から令和3年11月30日までの期間
※2 「特例特別特例取得」とは、上記※1の特別特例取得に該当する場合で、床面積が40平方メートル以上50平方未満の住宅の取得等をいいます。
※3 「特別特定取得」とは、住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等(消費税額及び地方消費税額の合計額をいう。以下同じです。)が、10%の税率により課されるべき消費税額等である場合におけるその住宅の取得等をいいます。
また、住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等が、8%又は10%の税率により課されるべき消費税額等である場合におけるその住宅の取得等を「特定取得」といいます。
上記の表のとおり、現行の基本的な住宅ローン控除については、一番下の緑で示している「控除期間10年」です。
一方、令和元年10月1日から消費税率10%の引き上げに伴い、新たに「控除期間13年」が創設されています(上記表の下から2番目)。この際に設けられた要件が、令和2年末までの入居でありましたが、新型コロナウィルス感染症の影響により、請負(施工)業務等が遅滞しているなどの状況が見られたため、コロナ特例として、注文住宅は令和2年9月末までの契約、分譲住宅などは令和2年11月末までの契約に限って、入居要件を令和3年末までに延長する措置がとられています(上記表の上から2番目)。
そして、令和3年度の税制改正において、「経済対策として控除期間13年の措置を延長」する改正がなされて、注文住宅は令和2年10月からの契約、分譲住宅は令和2年12月からの契約についても「控除期間13年」の措置を延長するとされました(上記表の上から1番目のオレンジ部分)。この注文住宅の延長の措置の要件が令和3年9月30日と迫ってきています。契約時の要件を満たしていれば、引き渡しから入居までの6ヵ月の要件は依然として存在するものの、入居要件は令和4年末までの入居が認められるため、注文住宅の契約を検討している方は、特に留意する必要があります。
<国税庁における新型コロナウイルス感染症に関する対応等について>
国内における新型コロナウイルス感染症が、過去最悪のペースで拡大している中、国税庁における新型コロナウイルス感染症に関する対応等について、改めて再確認しておく必要があります。特に、令和3年7月2日に「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」が更新されているため、本稿では新たに追加された項目を中心に確認していきます。
具体的に追加された項目は、下記のとおりです。
5 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係
<法人税に関する取扱い>
問3-2.ワクチンの職域接種に係る会場準備費用の負担を求めない場合の取扱い
<所得税に関する取扱い>
(各種所得の区分と計算)
問9‐6.ワクチンの職域接種により接種を受けた者の所得税の課税関係
問9‐7.ワクチンの職域接種に係る接種会場までの交通費の取扱い
問9‐8.ワクチンの職域接種に係るデジタルワクチン接種証明書の取得費用の取扱い
一つ目の「ワクチンの職域接種に係る会場準備費用の負担を求めない場合の取扱い」は、ワクチンの職域接種に係る会場を提供した法人(会社)についての取扱いです。具体的には、ワクチン接種事業の実施主体である市町村から委託を受け、接種1回当たり2,070円(税抜き)を基本として市町村から委託料を受領した金額を上回る会場準備費用が発生することになりますが、その超過額を関連会社や取引先に負担を求めないとした場合、経費区分上どのように取り扱われるかについてです。
FAQの中では、法人税法上の寄附金の額又は交際費等の額に該当するのかというものに対して、「貴社の従業員等のほか、関連会社及び取引先の従業員等もワクチン接種を受けることで、社内の新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止され、貴社の今後の業務遂行上の著しい支障の発生防止のため、つまり、貴社の業務遂行に必要な費用の負担」として、寄附金の額又は交際費等の額には該当しないとされています。また、職域接種の対象に、接種会場の近隣住民で希望する者を追加する場合であっても、上記の取扱いが変わるものではないと紹介されています。
二つ目の「ワクチンの職域接種により接種を受けた者の所得税の課税関係」については、一つ目の項目の表裏の関係で、法人(会社)が負担した職域接種の会場準備費用に関して、当該法人(会社)の役員及び従業員に対する給与として課税する必要なのかどうかについてです。
これについても、FAQでは「職域接種が、予防接種法の規定に基づき市町村において実施するものとされている接種であることに変わりはなく、市町村単位で行われている接種と同様、被接種者が負担すべき費用はありませんので、被接種者においてワクチン接種に係る税負担が生ずることはありません。」とされ、給与課税とはならないとしています。また、当該法人(会社)の役員及び従業員以外の被接種者についても、所得税の課税対象とはなりません。
三つ目の「ワクチンの職域接種に係る接種会場までの交通費の取扱い」と四つ目の「ワクチンの職域接種に係るデジタルワクチン接種証明書の取得費用の取扱い」についても、給与課税となるかどうかについてです。
交通費については、職務命令に基づき出張する場合の「旅費」と同等と考えられるため、非課税として差し支えないこととなっています。また、デジタルワクチン接種証明書の取得費用についても、法人(会社)の業務遂行上必要であると認められる場合には、その費用は法人(会社)の業務遂行上必要な費用であり、役員及び従業員が負担すべき費用には該当しないとしています。
以上のように、追加された項目はワクチンの職域接種に係る項目ではありますが、「申告・納付等の期限の個別延長関係」など他の項目についても、改めてFAQの確認をおねがいします。
<自民党ウェブサイト(あなたが使える緊急支援)のまとめについて>
令和2年4月28日に自民党のウェブサイトにおいて、「新型コロナウィルスにともなうあなたが使える緊急支援」と題した特設サイトが開設され、その後も定期的に修正等が行われています。
持続化給付金や家賃支援給付金といったものは既に終了していますが、特に個人事業主や中小企業向けの融資(かりる)関連におきましては、新たな信用保証制度の枠組みが創設されていて、公庫等による適用金利の優遇などが注目されています。
国、都道府県、市区町村の施策等、膨大にのぼる緊急支援策のなかで、主に国の施策について、本ウェブサイトは「個人」、「個人事業主・フリーランス」、「中小企業」、「大企業」の別に「うけとる」、「かりる」、「減額・免除」、「猶予等」に分かれていて、大変見やすいものとなっています。
令和3年7月31日時点において、各項目別になっているものを一覧にしたものが下記のとおりです。
皆様の置かれている状況に応じて、下記一覧を確認した上で、本ウェブサイトで概要を確認し、その後、関係各省庁のウェブサイトで詳細を確認することをお勧めします。
<「暮らしの税情報」について>
令和3年7月9日、国税庁のウェブサイトに、令和3年度版のパンフレット「暮らしの税情報」が公表されました。「暮らしの税情報」は、例年、その年の税制改正を反映したものがこの時期に公表されますが、暮らしに関する税金の考え方が一覧となっており、概要を把握するのに有効な情報の一つです。「暮らしの税情報」に掲載されている具体的な項目は、下記に掲げるとおりです。
「税の基礎知識」
所得税や消費税の仕組み、帳簿書類の保存期間や青色申告制度について、その概要が記載されています。
「給与所得者と税」
給与所得の源泉徴収票の見方や、配偶者控除や扶養控除といった家族と税、会社員が退職した際の退職金と税について紹介されており、特に勤続年数5年以下の場合の退職所得の計算については、令和3年度の税制改正において新設されているため留意する必要があります。
「高齢者や障害者と税」
公的年金等の所得計算や年金所得者の確定申告不要制度といった高齢者と税、障害者と税については障害者本人が受けられる特例と障害者を扶養している場合に受けられる特例が分かりやすく整理されています。
「暮らしの中の税」
「医療費を支払ったとき」「保険と税」「寄附金を支出したとき」「災害等にあったとき」「株式・配当・利子と税」について、それぞれ紹介されています。
医療費を支払った際には、通常の医療費控除とは別にセルフメディケーション税制といった特例を選択することもできます。「保険と税」については、主として生命保険について紹介されていて、生命保険料控除について、平成24年1月1日以後に契約した新契約に関するものとそれ以前の旧契約に関するものが一覧となっています。寄付金はいわゆる「ふるさと納税」が人気となっていますが、一定の寄付金については、所得税において所得控除と税額控除が選択となっていて、いずれか有利な方法を適用することができます。また、昨年から続いている新型コロナウィルス感染症による影響で申告や納税の期限を延長したいとき、震災や風水害も日本各地で発生していますが、これらの災害が発生した場合の雑損控除などについても詳細に紹介されています。「株式・配当・利子と税」については、所得税法や租税特別措置法でかなり特殊な取り扱いが定められており、いわゆる「NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」についても一覧となっていて大変分かりすい表が掲載されています。
「不動産と税、贈与・相続と税」
大きく不動産に関する内容と贈与・相続に関する内容が紹介されています。不動産の中でもマイホームについては、取得・保有・売却の場面で多くの特例制度が存在します。マイホームで最も身近な特例制度であるいわゆる「住宅ローン控除」については、詳細に紹介されており、令和3年度の税制改正も反映されているため、制度の概要を把握するのに役立つと思われます。贈与については、贈与税の概要と3つの大きな非課税制度である「住宅取得等資金」「教育資金」「結婚・子育て資金」の各種特例について紹介されています。相続については、相続税の基礎控除や財産の代表的な宅地の評価についてその概要が紹介されています。
「申告と納税」
各税目の申告期限と納期限の一覧や5つの納付方法(電子納税、振替納税、クレジットカード納付、コンビニ納付、窓口納付)などが紹介されています。具体的な確定申告書の作成は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」が大変充実しており、その案内や電子申告やスマホ申告についても踏み込んだ紹介がされています。
「その他」
下記に掲げる項目が、紹介されています。
・税に関する相談をするには
・行政文書・個人情報の開示を請求するには
・税務署長の処分に不服があるとき
・個人で事業を始めたとき
・法人を設立したとき
・公売に参加するには
以上のように、「暮らしの税情報」は、税金の概要を知る上で大変有用なものであり、特に生活に密接に関連した部分は、比較的深く掘り下げて紹介されています。気になる項目について、概要をこちらで把握して、より詳細な取り扱いをタックスアンサーなどで調べることをお薦めします。
<電話加入権の評価見直しについて>
令和3年7月1日、国税庁のウェブサイトに、令和3年の路線価が公表されました。
路線価に関するニュースは、別の様々なところで取り上げているので、本稿では割愛しますが、国税庁のウェブサイトから路線価図を調べる際には、「令和3年分財産評価基準を見る」の中で、各国税局管内の都道府県を検索することになります。この中に、路線価図以外の財産評価が記載されているのをご存じでしょうか。そして、その中の一つに、令和2年までは「電話加入権の評価」がありましたが、令和3年から当該項目が除かれているのをご存じでしょうか。
これは、令和3年5月31日に公表された「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」の中で、電話加入権の評価が見直しされたことに端を発しています。
この一部改正の中で、従来の財産評価基本通達161および162が、下記のとおり見直され、国税局長の定める標準価額によって評価する定めが削除されました。そのため、7月1日に公表された「財産評価基準書」からも削除されたということです。
さらに、「『財産評価基本通達』の一部改正(案)の概要」のパブリックコメントの中で、申告に当たっては、評価通達128の定めに基づき一括して評価する家庭用動産等に、電話加入権を含めるとして差し支えないものとする予定であるとのコメントもあることから、今後は、電話加入権として別建てで評価をせずに、まとめて家庭用動産等として一括評価して問題ないとの見解が示されました。
なお、これらの改正は、令和3年1月1日以後の相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価から適用するとしています。
このような改正がされた趣旨としては、現下の社会経済情勢において、電話加入権の取引相場がもはや存在していないことにあります。そして、国税局長の定める標準価額も平成26年以降、一回線当たり「1,500円」と非常に低額となっていることやインターネット等の情報通信技術の発達等により、納税者において容易に売買実例価額を調べることも可能となっていること等を踏まえると、標準価額を定める必要性が乏しくなっていると考えられます。
これから令和3年に発生した相続や遺贈に係る相続税の確定申告書の提出が本格化するかと思われますが、路線価図で路線価を調べる際に、電話加入権の取扱いも改めて考慮して頂ければ幸甚です。
<税務行政のデジタル・トランスフォーメーションについて>
令和3年6月11日に、国税庁のウェブサイトに「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-」が公表されました。
デジタル・トランスフォーメーションを推進する動きが社会全体で高まっている中で、税務行政サービスにおいても、様々なデジタルの活用が模索されています。
今回公表された中で、あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会としての将来構想として、具体的に次の5つが打ち出されています。
・構想1:税務署に行かずにできる「確定申告(納付・還付)」(申告の簡便化)
・構想2:税務署に行かずにできる「申請・届出」(申請等の簡便化)
・構想3:税務署に行かずにできる「特例適用状況の確認等」(自己情報のオンライン確認)
・構想4:税務署に行かずにできる「相談」①(チャットボットの充実等)
・構想5:税務署に行かずにできる「相談」②(プッシュ型の情報配信)
これを一覧にすると、下記のような図になります。
国税庁ウェブサイト
「https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation/pdf/syouraizo2_r0306.pdf」
構想1の確定申告等のデジタル化は、電子申告の普及によってかなり進んでいますが、将来構想においては、さらに申告の簡便化を目指すとしています。実際、マイナポータルの活用などにより、証券会社の特定口座内の取引や生命保険料控除、住宅ローン控除などは令和3年1月から順次自動取り込みが開始されています。
また、構想2や構想3については、開業届などの申請や提出していたかの有無の確認については、閲覧申請しやすくなるといった見直しが入ったとはいえ、直接提出した税務署へ出向く必要があり、これらはデジタル化が進んでいるとはいえない状況です。特に、消費税の簡易課税制度の選択届出の状況や相続税の相続時精算課税制度などは、納税者が正しく認識していないケースもあるため、これらがマイナポータルなどで閲覧できるようになれば、納税者の利便は格段に高まると考えられます。
さらに、現在の国税庁の電話相談センターによる電話相談は、平日のコアタイムのみの対応のため構想4や構想5による内容が充実してくれば、24時間365日いつでも相談にのってもらえる仕組みとなることが期待できます。
以上のように、税務行政も様々なデジタル化へシフトしていくと考えられますが、これらの移行を後押しするのがマイナンバーカードの普及であると考えられます。マイナポータルを利用するためにはマイナンバーカードを取得して、カードのICチップに搭載されている公的個人認証を用いてログインする必要があるためです。新型コロナウィルス感染症拡大に伴う特別定額給付金の支給に際しても、マイナンバーカードの所有者かどうかで支給までの時間にかなりの差がみられました。通知カードからの切り替えが済んでいない方は早めにマイナンバーカードへの切り替えをお勧めします。
<消費税のインボイス制度について>
令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が導入される予定です。このインボイス制度に関して、令和3年5月24日、国税庁のウェブサイトに、「インボイス制度特設サイト」がリニューアルされました。
インボイス制度とは、適格請求書(インボイス)を利用して、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。適格請求書(インボイス)を発行できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られますが、この「適格請求書発行事業者」になるためには、登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。
この登録申請書の受付開始は、本年(令和3年)10月1日から開始される予定であり、インボイス制度導入までのスケジュールは、下記のとおりです。
このインボイス制度に対して、現在採用されている方式は、「区分記載請求書方式」といわれるものです。令和元年10月1日から現在の消費税率10%になったのと同時に、飲食料品を中心に軽減税率8%も導入されました。この8%と10%を区別するために導入されたのが、「区分記載請求書方式」です。この現行の方式が、令和5年10月からインボイス制度に大きく改正される予定です。
区分記載請求書方式とインボイス制度の記載事項の比較は、次のとおりです。
インボイス制度の特徴は、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」および「消費税額等」の記載が追加された点であり、この登録番号が非常に重要なものとなります。というのも、買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必須となる予定だからです。
よって、売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければならず、交付したインボイスの写しも保存しておく必要があります。これは裏を返すと、売手が課税事業者ではなく免税事業者の場合には、登録事業者となることはできず、結果消費税を転嫁することもできないため、買手側は仕入税額控除を受けられないこととなります。
以上のように、令和5年10月1日以降に導入される予定のインボイス制度は、売手にとっても買手にとっても、消費税実務、強いては日々の取引実務において甚大な影響が生じる恐れがあります。令和元年10月の軽減税率導入の際もかなりの混乱が見受けられましたが、是非早いうちから、これらのインボイス制度特設サイトで情報を収集して、万全の準備をお願いします。
<祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらましについて>
令和3年5月21日、国税庁のウェブサイトに「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」が公表されました。
これは、令和3年度の税制改正において、祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度(以下「教育資金の非課税制度」という)の適用期限が、令和5年3月31日まで2年延長されるとともに、下記のとおり改正されたことによるものです。
【令和3年度税制改正による主な改正事項】
(1)信託等をした日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合(その死亡の日において、受贈者が次の①~③のいずれかに該当する場合を除きます。)において、受贈者がその贈与者から信託等により取得した信託受益権等について、この非課税制度の適用を受けたことがあるときは、その死亡の日までの年数にかかわらず、その死亡の日における管理残額を、その受贈者がその贈与者から相続等により取得したものとみなします。
① 23歳未満である場合
② 学校等に在学している場合
③ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合
(注)上記②または③については、その旨を明らかにする書類を贈与者が死亡した旨の届出と併せて金融機関等の営業所等に提出等をした場合に限ります。
(2)上記(1)により相続等により取得したものとみなされる管理残額について、その受贈者が贈与者の子以外(孫など)の者である場合は、その贈与者の管理残額に対応する相続税額について、相続税額の2割加算の対象とされます。
<適用時期>
令和3年4月1日以後に信託等により取得する信託受益権等に係る相続税および贈与税について適用されます。
特に、上記(1)と(2)については、拠出時期によって相続税課税が、下記のとおり変遷しています。
(参考)提出時期による相続税課税の比較
今回の改正の主な論点は、教育資金の非課税制度を実施後に贈与者が死亡した場合、上記(1)の①から③に該当しない場合には、相続税課税(相続税の加算)の対象となり、かつ、受贈者が孫などの場合には、相続税額の2割加算の対象となる点です。裏を返せば、教育資金の非課税制度を実施後に贈与者が死亡した場合、上記(1)の①から③に該当する場合には、相続税課税(相続税の加算)の対象とはなりません。
このうち、①はいわゆる4年制大学の卒業時点の年齢である22歳を想定しているものと考えられます。また、上記②については浪人して大学に入学した場合や大学院進学等をした場合が考えられます。さらに、③については、例えば資格取得に際して雇用保険の教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合が想定されます。
いずれにしても、受贈者が30歳に達する日までに一括贈与の資金をどのように費消していくかがポイントとなります。今回の税制改正によって、一部相続税課税等の対象とはなるものの、資産移転の一つの方法としては依然として有効な活用方法であると考えられます。
<在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)について>
令和3年4月30日、国税庁のウェブサイトに「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」が公表されました。これは、令和3年1月に公表された内容に「在宅勤務者に対する食券の支給」を追加したものです。
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、各地で緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置が発出されています。特に最近は、変異型ウィルスが猛威を振るっている中、国としても積極的に在宅勤務(テレワーク)を推奨しています。在宅勤務を進める際に、在宅勤務に係る事務用品等の支給や通信費、電気料金等を企業で負担するケースが考えられます。
このFAQは、主に源泉所得税関係についての内容ですが、企業における経理処理にも関係するものと考えられます。特に、給与として処理される部分については、毎月源泉徴収が必要となり、その徴収した源泉所得税については翌月10日に納付する必要が生じます。また、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税および復興特別所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があります。この場合の特例の期限が7月10日であるため、上期の1月から6月支払分の集計等を随時進めていく必要があります(なお、7月から12月支払分は翌年1月20日が納期限です)。
ここでポイントになるのが、源泉徴収をする必要があるのか、つまり給与処理なのかそうでないのかがポイントとなります。
これらをFAQに合わせて一覧にまとめたのが、下記の図です。
まず、「在宅勤務手当(FAQのNo1)については、一般的に渡切支給として実費精算されない性格と考えられるため、通常の基本給と同様に、給与課税となり給料手当として源泉徴収も必要となります。
それ以外の内容については、業務に起因して実費相当額の精算をするかどうかによって異なります。実費相当額の精算がされないものについては、いわゆる家事費として社員の個人的な経費となるため、企業において経費処理は当然認められません。実費相当額の精算がされるもののうち、業務使用部分についての判断基準が不明確であるため、FAQにおいてその判断基準が示されています。
事務用品等については、いわゆるパソコンや複合機、携帯やモバイル通信機器が考えられます。FAQでは、これらの所有権が従業員に移転する場合には、従業員に対する現物給与として課税する必要があるとしています。一方、あくまでこれらの事務用品等を貸与しているに過ぎない場合には、消耗品費や備品等として経費処理が認められます。なお、実際の処理上は、少額減価償却資産や一括償却資産も考慮して費用処理か資産処理かを判断する必要があります。
通信費や電気料金といった役務サービス部分については、さらに業務使用部分の判断基準が不明確なため、より具体的な計算方法をFAQで定めています。計算の詳細は触れないが、併せて確認頂ければと思います。
以上のように、源泉所得税が関係するかどうかは給与課税となるかどうかによって判断が異なるため、在宅勤務(テレワーク)を検討する際には、各企業において、その判断指針等を明確にしておくことが肝要です。
令和3年度の固定資産税の評価替えについて
令和3年度の固定資産税の通知が、不動産の所有者に対して各自治体から送付されているころかと思われます。固定資産税の評価替えは3年に一度行われ、令和3年度は評価替えの年に当たります。地域によっては、平成30年度に比べて上昇している地域もあるかと思われますが、現下の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、令和3年度の税制改正において、固定資産税の評価額が上昇した場合であっても、令和2年度の価格を据え置く改正がなされています。
一方、この改正はあくまで固定資産税や都市計画税についての内容であるため、相続税や不動産取得税、登録免許税などについては、評価替え後の固定資産税の評価額を利用して計算することとなります。
今回は、令和3年度の税制改正の具体的内容について紹介していきます。
(1)固定資産税、都市計画税の課税方法
固定資産税や都市計画税は、その年の1月1日時点で土地や家屋を所有している者に対して課されるものであり、その一般的な計算式は下記のとおりです。
・固定資産税の税額=課税標準額×1.4%
・都市計画税の税額=課税標準額×0.3%
このうち、特に土地についての固定資産税および都市計画税は、原則として、価格または特例額(住宅用地の場合は特例措置を適用した額〔本則課税標準額〕)を基に税額を算出しています。
しかし、土地の固定資産税および都市計画税は、評価替えによる税額の急激な上昇を抑える等の理由により負担調整措置を適用し、評価額よりも低い課税標準額で税額を算出しています。
平成9年度から、この負担調整措置は「負担水準の均衡化」という観点から、一定の負担水準に応じて税負担を調整することとなりました。また、平成18年度から、負担水準のばらつきを解消するため、負担水準の高い土地の税負担を抑えつつ、より一層の「負担水準の均衡化」を促進する措置として、新たな負担調整措置が講じられることとなりました。
(2)令和3年度の税制改正の内容
令和3年度の税制改正において、令和3年度評価替えを起因とする税額の上昇を抑えるため、前年度と比較して価格が上昇する場合に、前年度課税標準額が据え置かれることとなりました。
具体的な取り扱いとしては、下記の二点です。
なお、この取り扱いは、都市計画税についても同様の改正がなされています。したがって、固定資産税と都市計画税については、令和3年度の課税標準の金額が令和2年度よりも大きくなったとしても、固定資産税の課税標準は令和2年度のものが据え置かれることとなります。
(3)相続税、不動産取得税および登録免許税の課税方法
上記(2)の改正は、あくまで固定資産税と都市計画税についての内容であるため、相続税や不動産取得税、登録免許税は影響を受けないこととなります。裏を返すと、令和3年度の評価替えに伴い、価格が上昇した地域については、当該上昇した価格を基に税額が決定されることとなります。
そもそも、これらの税金は、固定資産税や都市計画税と異なり、課税標準の特例は存在せず、固定資産税の価格自体を元に計算することとなっています。
その具体的な計算方法は、下記のとおりです。
・土地の相続税評価額(倍率地域)=固定資産税の価格×倍率
・登録免許税=固定資産税の価格×一定税率
・不動産取得税=固定資産税の価格※×3/1,000
(4)まとめ
令和3年度は、固定資産税の評価替えの年となりますが、固定資産税の通知が届いたら、価格(評価額)の部分のみならず、固定資産税や都市計画税の課税標準がどのような取り扱いとなっているか注目して頂ければと思います。
<事業再構築補助金について>
令和2年度の第3次補正予算において1兆1,485億円が計上されている事業再構築補助金については、3月26日から公募開始されており、4月15日から具体的な申請受付が開始される予定です。
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。
今回は、この事業再構築補助金についての概要を紹介します。
(1)主な申請要件
① 売上減少要件
申請前の直近6ヵ月間のうち、任意の3ヵ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3ヵ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。
② 事業再構築取組要件
事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行う必要があり、その具体的な指針が経済産業省から詳細に明示されています。
<https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin.pdf?0329>
③ 認定経営革新等支援機関との事業計画策定要件
事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関と策定しますが、補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定する必要があります。
また、具体的な事業計画の策定にあたっては、補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む内容とする必要があります。
(2)具体的な補助額および補助率
具体的な補助額および補助率については、下記の表のとおりです。
(3)補助対象経費
補助対象経費は、この事業の対象として明確に区別できるものである必要があり、事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応規模の投資をしていく必要があります。
具体例として、下記のようなものが挙げられています。
(4)事業計画の策定
補助金の審査は、事業計画を基に行われるため、採択されるためには、合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要となります。
具体的な事業計画に含めるべきポイントの例として、下記のようなものが挙げられています。
・現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
・事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)
・事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
・実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)
これらの事業計画を対象事業者が自身で策定するのは大変困難であるため、実際の事業計画策定に際しては、認定経営革新等支援機関と相談しながら行っていく必要があります。認定経営革新等支援機関には、事業計画の策定段階のみならず、事業実施の段階でのアドバイスやフォローアップも期待されています。
なお、認定経営革新等支援機関については、中小企業庁のウェブサイトで検索することが可能です。
(5)補助金の収入計上時期
補助金の収入計上時期については、国税庁のウェブサイトに令和2年3月に掲載されている「国税における新型コロナウィルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取り厚いに関するFAQ」をご参照ください。
<https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/pdf/faq.pdf>
具体的には、小規模事業者持続化補助金などと同様に支給決定時または経費発生時に計上することになると考えられます。特に、事業再構築補助金については、交付決定後に補助事業期間として12ヵ月または14ヵ月間が設定されており、この期間に設備の購入等を行い、その後、実績報告を行い確定検査の後、補助額が確定、補助金の支払いとなるため、支給(交付)決定から実際の補助金の支払いまでの期間の間に決算を跨ぐ可能性が高くなります。この点については、顧問税理士などと相談しながら具体的処理について慎重に行っていく必要があります。
これまで確認してきたように、予算額が大きいため大変注目されている補助金ではありますが、第1回目の申請受付の応募締め切りが4月30日の予定となっています。また、補助金申請にあたり、事業者自身がGビズIDを利用して電子申請していく必要があります。
このGビズIDの付与についても期間を要するため、簡便的な申請が検討されているとはいえ、早めに準備を進める必要があります。また、補助金の金額ありきで安易な事業計画を立てるのではなく、コロナ禍における事業転換などを真剣に検討した上で、上手く事業再構築補助金の事業を活用して頂ければ幸甚です。
<消費税の総額表示と会計処理について>
(1)消費税の総額表示
平成16年4月1日から、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合には、税込価格(消費税額及び地方消費税額を含めた価格)を表示することが義務付けられています(総額表示義務)。これは、税抜価格のみの表示では、レジで請求されるまで最終的にいくら支払えばいいのか分りにくく、また、同一の商品・サービスでありながら「税抜表示」の事業者と「税込表示」の事業者が混在しているため価格の比較がしづらいといったことを踏まえ、事前に「消費税額を含む価格」を一目で分かるようにするという消費者の利便性に配慮する観点から実施されたものです。
一方で、消費税及び地方消費税の税率が、下記のとおり変遷を遂げており、特に平成26年4月と令和元年10月にそれぞれ税率が引き上げられ、現在は軽減税率として8%も並行しています。消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保及び事業者による値札の貼り替え等の事務負担に配慮する観点から、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(平成25年法律第41号)により特例が設けられ、平成25年10月1日から令和3年3月31日までの間、一定の要件の下、税込価格を表示することを要しないこととされています。
この特例が、令和3年3月31日をもって失効し、4月1日以降においては、消費者に対して価格を表示する場合には、消費税法の規定に基づき、税込価格を表示することが必要となります。
<消費税率及び地方消費税率の推移>
総額表示の表示例は、国税庁ウェブサイトのタックスアンサーNo.6902に、以下のとおり具体的に紹介されています。
総額表示のポイントは、支払総額である「11,000円」さえ表示されていればよく、「消費税額等」や「税抜価格」が表示されていても構わない点です。例えば、「10,000円(税込11,000円)」とされた表示も、消費税額を含んだ価格が明瞭に表示されていれば、「総額表示」に該当します。また、総額表示が義務付けられるのは、あらかじめ取引価格を表示している場合であり、価格表示がされていない場合にまで価格表示を強制するものではありません。
(2)消費税の会計処理
消費税の会計処理については、税抜経理方式と税込経理方式の2種類があります。
①税抜経理方式
税抜経理方式は、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます。)の合計額を「仮払消費税等」と「仮受消費税等」という勘定科目を用いて、本体価格とは別の科目で処理する方法で、期末に確定した消費税額を「未払消費税等」に計上し、「仮払消費税等」と「仮受消費税等」との差額を「租税公課」または「雑収入」として計上します。
②税込経理方式
税込経理方式は、消費税等の合計額を本体価格に含めて処理する方法で、期末に確定した消費税額を「租税公課」と「未払消費税等」(還付の場合は、「消費税等還付未収入金」と「雑収入」)に計上する方法です。
ここで注意して頂きたいのが、上記(1)の消費税の総額表示と(2)の消費税の会計処理は関連性がないということです。つまり、消費税の総額表示が義務化されるからといって、消費税の会計処理が税込経理方式に一本化されるものではないということです。
むしろ留意すべき点は、「収益認識に関する会計基準」という別の会計基準の導入によって、上場企業を中心に消費税等の会計処理は、税込経理方式を採用できなくなるという点です。
「収益認識に関する会計基準」は、企業会計基準委員会より平成30年3月30日に公表されました。この会計基準は、早期適用が認められてきましたが、令和3年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から強制的に適用が開始されます。
この会計基準の第47項に、下記のとおり、取引価格に関する定めがあり、当該取引価格をもって収益計上額とすることとしています。
ここでいう「第三者のために回収する額」の代表的なものが消費税等となります。よって、売上に係る消費税等は、第三者である国や都道府県に納付するため、第三者に支払うために顧客から回収する金額に該当することから、取引価格には含まれないこととなるため、事実上、税抜経理方式しか適用できないことになります。
(3)まとめ
これまで確認してきたように、令和3年4月1日から消費税の会計処理や表示について、大きな変更が予定されています。特に、「収益認識に関する会計基準」の適用対象となる上場企業やその子会社を中心とした監査対象企業については、早急に準備していく必要があります。
<所得控除(基礎控除)について>
令和2年分(以下「本年分」といいます。)の所得税の確定申告が佳境を迎えているかと思われますが、本年分から所得控除のうち基礎控除につきまして、一律38万円の控除額から合計所得金額に応じた控除額に改正となっています。具体的には、合計所得金額が2,400万円以下の場合、控除額が10万円増えて48万円の控除額となりますが、合計所得金額が2,400万円を超える場合、下記のように段階的に控除額が縮小していきます。
※「国税庁タックスアンサーNo.1199」参照
会社員など、勤務先の会社において年末調整済みの給与所得の源泉徴収票を受け取っている場合、会社からの収入金額(給与額)に応じてこの合計所得金額が決定され、基礎控除額48万円の控除を受けているケースが多いかと思われますが、その後、給与所得以外の所得が存在するため、別途、確定申告を行う場合、上記の合計所得金額が変化することになり、基礎控除額が場合によっては0円となるケースもあるため注意を要します。
特に、不動産や株式の譲渡所得などがある場合、合計所得金額が本年分だけ異常に高くなることが考えられます。
なお、ここでいう「合計所得金額」とは、具体的には、下記のように定義されています。
次の①と②の合計額に、退職所得金額、山林所得金額を加算した金額です。
※申告分離課税の所得がある場合には、それらの所得金額(長(短)期譲渡所得については特別控除前の金額)の合計額を加算した金額です。
また、同様に注意を要するのが、配偶者控除についてです。配偶者控除についても平成30年分の確定申告から納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、適用を受けることができないようになっています。配偶者控除額の金額については、下記のとおりです。
※老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
なお、配偶者が障害者の場合には、配偶者控除の他に障害者控除27万円(特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円)が控除できます。
※「国税庁タックスアンサーNo.1191」参照
例えば、本年分の給与所得については1,000万円以下で配偶者の合計所得金額が48万円(令和元年分以前は38万円)以下の場合、配偶者控除38万円(老人控除対象配偶者は48万円)が受けられるため、給与所得の源泉徴収票には配偶者控除の適用を受けていたものの、他の所得があり確定申告書を改めて作成したところ、合計所得金額が1,000万円を超えることとなった場合、配偶者控除は受けられないこととなります。
この配偶者控除につきましては、平成30年分から既に合計所得金額に応じた控除額に改正されていますが、これに加えて本年分から基礎控除についても同様に、合計所得金額に応じた控除額に改正されています。国税庁の確定申告書作成コーナーや各種税務ソフトを利用して作成している場合には、これらの合計所得金額などを自動判定して適用の有無が確認できるかと思われますが、特に手書きで確定申告書を作成して、紙媒体での提出を検討されている方は、特にご留意ください。
<法人設立ワンストップサービスについて>
令和3年2月17日、国税庁のウェブサイトに「法人設立ワンストップサービスの対象が全ての手続に拡大されます」と題した内容がアップされました。
このサービスの特徴は、法人代表者のマイナンバーカードに紐づけたマイナポータルのサイトを利用して、下記の各種届出等を一元的に行えるようにするものです。
・国税および地方税に関する設立届(税務署や地方自治体)
・雇用に関する届出(年金事務所やハローワーク)
<https://app.e-oss.myna.go.jp/Application/ecOssTop/>
・定款認証および設立登記(法務省)
・GビズIDの発行(各種補助金の申請など)
コロナ禍で電子化が急速に普及する中、今までのように各行政機関ごとに紙媒体を中心に手続をしていましたが、今後は、メンテナンス期間を除き24時間365日、電子媒体で行うことができるようになります。
このうち、国税の各種届出につきましては、具体的に下記の項目をワンストップサービスによって利用できるようになる予定です。
参照URL
<https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/OSS.htm>
国税だけでもこれだけの項目を、一括で届け出することができるようになるのは大変意義があるものです。一方で、留意すべき点もあります。それは、各種届出の期限についてです。国税や地方税、雇用関係の各種届出は期限が存在します。特に、国税関係手続につきましては、e-Tax受付時間外に提出された場合は、翌稼働日に提出されたことになってしまいます。例えば、法人税の青色申告の承認申請が期限後になってしまうと、設立年は青色申告の特典が受けられなくなってしまうため、特に留意する必要があります。
また、法人設立ワンストップサービスで法人設立関連手続を行うためには、「設立登記」後に国税庁から通知される「法人番号」を受領している必要があります。そのため、実際の流れとしては、法人の設立登記を完了させることが先で、その後、「法人番号」が発行され次第、法人代表者のマイナボータルを利用して各種届出を行うことになります。
<助成金等の収入計上時期について>
令和2年分の個人の所得税の確定申告が2月16日から開始されますが、それに先立って、課税対象となる助成金等についての収入計上時期が明確にされました。
具体的には、令和2年1月13日に「国税における新型コロナウィルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取り厚いに関するFAQ」が更新され、問9‐2に「助成金等の収入計上時期の取扱い」として追加されました。
これによると、まず基本的な考え方は、所得税法第36条に記載の「所得税の計算上、ある収入の収入計上時期については、その収入すべき権利が確定した日の属する年分となる。」として、いわゆる権利確定主義の考え方を踏襲し、助成金等については、国や地方公共団体により助成金等の支給が決定された日に、収入すべき権利が確定すると考えられるため、原則として、その助成金等の支給決定がされた日の属する年分の収入金額となります。
ただし、助成金等が、支給要綱などで定められた特定の支出を補填するものについて、その支給を受けるために必要な手続をしているときには、その支出と同時に、実質的に、助成金を受給する権利が確定していると考えられることから、その収入計上時期は、結果として、所得が生じることがないように、その支出が発生した日の属する年分として取り扱うこととしています(「所得税基本通達 36・37共―48」参照)。この「特定の支出」については、例えば、医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業の補助金におけるマスクや消毒液の購入費用や清掃委託費用などが該当します。
これらの考え方を基本として、FAQでは、以下のとおり、所得区分ごとに収入計上時期を定めています。
特に持続化給付金については、その支給決定時に収入を計上するのは言うまでもありませんが、そもそもその支給対象の原因となった所得区分ごとに分けて、確定申告を行うことに留意する必要があります。
また、Go To事業関連については、給与所得者のみの個人であって年末調整等によって確定申告を通常は行っていない場合においても、他の所得金額が20万円を超える場合には、確定申告を行う必要があり、特にふるさと納税の返礼品などと合計して計算する必要があるため、留意する必要があります。
※参照URL https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/pdf/faq.pdf
※1 「経費発生時」とは、助成金等の支給対象となる経費を支出した時に収入計上するものです。
※2 助成金等による補填を前提として所定の手続を済ませている場合には、その収入計上時期はその支出が発生した日(経費発生時)の属する年分となります。
※3 これらの助成金等を固定資産の取得等に充てた場合において、一定の要件を満たすときには、その固定資産の取得等に充てた部分の金額に相当する金額を総収入金額に算入しない(総収入金額不算入)こととされています。
(注)いわゆる現金主義(所得税法第67条)や措置法差額(租税特別措置法第26条)の適用を受ける方なども対象です。
※4 事業所得等の金額の計算においては、「総収入金額」から「必要経費」を差し引くこととされています。各種給付金等の申請手続に際して発生した費用(行政書士に対する報酬料金など)は、この必要経費に該当します。
一方、課税対象とはならない(非課税となる)助成金等についても下記のとおり具体的に明示されています。
令和2年分の個人の所得税の確定申告の期限は、令和元年と同様に一か月延長され、令和3年4月15日までとなりましたが、令和2年中に支払いを受けた助成金等については、まずは課税対象となるか否か、次に課税対象となるものについてはその所得区分について、改めて整理されるのをお勧めします。
<複数の相続人等がいる場合の相続税の申告書の作成方法について>
令和3年1月4日、国税庁のウェブサイトに「複数の相続人等がいる場合の相続税の申告書の作成方法」に関するリーフレットが掲載されました。
(参照URL『https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/pdf/0020012-133.pdf』)。
これは令和3年度税制改正の大綱において、税務関係書類における押印義務の見直しを行うこととされた趣旨を踏まえ、税制改正前であっても、税務関係書類に押印がなくとも改めて押印を求めないこととし、相続人または受遺者(以下「相続人等」といいます。)による相続税申告書への押印についても同様に取り扱うといったものです。
このため、2人以上の相続人等がいる場合に、相続税の申告書へ押印をしないときは、申告書の提出意思の有無を明らかにするため、申告書第1表及び第1表(続)(以下「第1表等」といいます。)には共同して提出する方のみを記載して提出するものとしています。
なお、共同して申告書を提出しない相続人等の方は、別途申告書を作成・提出する必要があります。
なお、上記取扱いはあくまで書面提出する場合の話ですので、相続税の申告をe-Taxにより提出する際に、複数の相続人等の申告を税理士等がまとめて代理送信する場合には、申告書第1表または第1表(続)に利用者識別番号の入力がある相続人等のデータを有効なものとして受け付けることとなりますので、共同して申告書を提出するか否かの明示を別途行う必要はありません。これに併せて「相続税申告書の代理送信等に関するQ&A」についても、令和3年1月に更新されているため、ご参照ください。
(参照URL『https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0019009-058.pdf』)。
<固定資産税・都市計画税の減免措置について>
令和3年度の償却資産の申告期限が、令和3年2月1日(1月31日が日曜日のため)に控えていますが、令和3年度については、新型コロナウイルス感染症の影響等により、一定の要件を満たした場合、設備等の償却資産および事業用家屋に対する固定資産税および都市計画税をゼロまたは2分の1とする減免措置が図られています。この減免措置の申請は、事業者が行わなければならず、申請期限についても、令和3年2月1日となっている点に留意する必要があります。
今回は、この減免措置について、その要件や手続き等についての概略を紹介します。
(1)適用対象者
新型コロナウイルス感染症の影響により事業収入が減少している中小企業者等
中小企業者等の定義
・資本金または出資金の額が1億円以下の法人
(一定の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人を除く)
・資本金または出資金を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人(一定の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人を除く)
・常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人事業主
(2)対象資産
設備等の償却資産および事業用家屋
居住用(家事用)で使用している家屋や土地については対象外
(3)減免対象となる税金(令和3年度分に限る)
設備等の償却資産および事業用家屋に対する固定資産税
事業用家屋に対する都市計画税
(4)適用要件
令和2年2月から10月までの任意の連続する3ヵ月間の事業収入の対前年同期比率が30%以上減少している場合
(5)減免率
上記(4)の減少割合が50%以上の場合・・・全額
上記(4)の減少割合が30%以上50%未満の場合・・・2分の1
(6)手続き
認定経営革新等支援機関等に、
①中小企業者であること、
②事業収入の減少、③特例対象家屋であること、
④特例対象家屋の居住用・事業用割合(兼用で利用している場合のみ)
について確認を受けた上で、令和3年2月1日までに、資産が所在する市区町村に、必要書類と共に、減免措置の申請を行います。
以上が減免措置の概略となりますが、本措置が令和3年度に限定されていて、さらに令和3年2月1日が期限のため、該当する方は早めに準備を進めていただけたらと思います。
参考資料(8ページ)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/pamphlet/2020/201030zeisei.pdf