事務所概要

事務所名分銅会計事務所
所長名
代表税理士 分銅雅一
(登録番号第123843号)
所在地

〒160-0022
東京都新宿区新宿二丁目3番12号 グレイスビル7F

電話番号03-6380-1093
FAX番号03-6380-1094
業務内容

自社株式と不動産の承継に関連する

1.相続税・譲渡所得税の税務申告

2.相続・事業承継対策の立案及び実行支援

3.個人及び法人の税務顧問

4.セミナー及び研修の講師

適格請求書発行事業者登録番号

T2810600793215

ブログ 2023年10月13日

居住用の区分所有財産の評価について>

 令和5928日に、「居住用の区分所有財産の評価について」の法令解釈通達が公表されました。

これは、近年の区分所有財産の取引実態等を踏まえ、居住用の区分所有財産の評価方法を定めたものであり、令和4419日の最高裁判決に端を発した、いわゆるタワマン節税に関わるものです。

本最高裁判決を経て、令和5年度与党税制改正大綱(令和4年1216日決定)に、「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。」旨が記載された。その後、令和5130日に国税庁において「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」の第1回会議が行われました。

そして、721日に新たな通達案として、「居住用の区分所有財産の評価について」の法令解釈通達(案)が公表され、意見公募手続を経て、928日に確定しました。

今回は改めて、本改正について解説していきます。 

今回の改正のポイントは、従来の路線価(自用地としての価額)や固定資産税評価額(自用家屋としての価額)といった評価額に加え、相続税評価額が市場価格と乖離する要因となっている築年数総階数(総階数指数)所在階敷地持分狭小度の4つの指数(評価乖離率)に基づいて、評価額を補正する方向となった点です。

具体的には、これら4指数に基づき統計的手法により乖離率を予測し、その結果、評価額が市場価格理論値の60%(一戸建ての評価の現状を踏まえたもの)に達しない場合は60%に達するまで評価額を補正するというものです。これを図示したものが次のものです。


※国税庁ウェブサイト

https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023006-018.pdf」参照。 

上記図に基づけば、見直し前において、評価水準(乖離率の逆数)が60%未満であったものは60%に上方修正されることになります。一方で、評価水準が100%超であったものは100%に下方修正されることとなります(下方修正は極めて軽微であると見込まれます)。

この「評価乖離率」については次のとおり定義されています。

(算式) 評価乖離率=A+B+C+D+3.220

上記算式中の「A」、「B」、「C」及び「D」は、それぞれ次によります。

「A」=当該一棟の区分所有建物の築年数×△0.033

「B」=当該一棟の区分所有建物の総階数指数×0.239(小数点以下第4位を切り捨て)

「C」=当該一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階×0.018

「D」=当該一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度×△1.195(小数点以下第4位を切り上げ)

(注1)「築年数」は、当該一棟の区分所有建物の建築の時から課税時期までの期間とし、当該期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とします。

(注2)「総階数指数」は、当該一棟の区分所有建物の総階数を33で除した値(小数点以下第4位を切り捨て、1を超える場合は1)とします。この場合において、総階数には地階を含みません。

(注3)当該一室の区分所有権等に係る専有部分が当該一棟の区分所有建物の複数階にまたがる場合には、階数が低い方の階を「当該一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階」とします。

(注4)当該一室の区分所有権等に係る専有部分が地階である場合には、「当該一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階」は、零階とし、Cの値は零とします。

(注5)「当該一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度」は、当該一室の区分所有権等に係る敷地利用権の面積を当該一室の区分所有権等に係る専有部分の面積で除した値(小数点以下第4位を切り上げる。)とします。

また、「評価水準」についても、1を評価乖離率で除した値とすると定義されています。 

これらを踏まえたうえで、具体的な計算は下記のとおりとなります。 

まず、一室の区分所有権等に係る敷地利用権の価額については、「自用地としての価額」に、次の算式による区分所有補正率を乗じて計算した価額を当該「自用地としての価額」とみなして評価基本通達(評価基本通達25並びに同項により評価する場合における評価基本通達27((借地権の評価))及び27-2((定期借地権等の評価))を除く)を適用して計算した価額によって評価します。ただし、評価乖離率が零又は負数のものについては、評価しません。 

(算式)

1)評価水準が1を超える場合

           区分所有補正率=評価乖離率

2)評価水準が0.6未満の場合

           区分所有補正率=評価乖離率×0.6

(注1)区分所有者が次のいずれも単独で所有している場合には、「区分所有補正率」は1を下限とする。

イ 一棟の区分所有建物に存する全ての専有部分

ロ 一棟の区分所有建物の敷地

(注2)評価乖離率を求める算式及び上記(2)の値(0.6)については、適時見直しを行うものとします。 

次に、一室の区分所有権等に係る区分所有権の価額については、「自用家屋としての価額」に、上記2に掲げる算式(()1を除く)による区分所有補正率を乗じて計算した価額を当該「自用家屋としての価額」とみなして評価基本通達を適用して計算した価額によって評価します。ただし、評価乖離率が零又は負数のものについては、評価しません。

上記の評価方法の適用後も、最低評価水準と重回帰式については、固定資産税の評価の見直し時期に併せて、当該時期の直前における一戸建て及びマンション一室の取引事例の取引価格に基づいて見直すものとするとしています。また、当該時期以外の時期においても、マンションに係る不動産価格指数等に照らし見直しの要否を検討するものとするとしています。

加えて、マンション市場価格の大幅な下落その他見直し後の評価方法に反映されない事情が存することにより、当該評価方法に従って評価することが適当でないと認められる場合は、個別に課税時期における時価を鑑定評価その他合理的な方法により算定する旨を明確化する(他の財産の評価における財産評価基本通達6項に基づくこれまでの実務上の取扱いを適用)とのことです。

 今回のマンションの相続税評価額の見直しについては、令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産に適用されます。したがって、令和5年以前に取得しているマンションについても見直し後の評価により行うこととなります。

令和6年1月以降、贈与税の改正や相続税における生前贈与加算(被相続人から生前に暦年課税に係る贈与によって取得した財産のうち相続開始前3年以内に贈与されたものについては、贈与税がかかっていたかどうかに関係なく加算するもの)も大きく変わる予定です。相続対策等については、抜本的な見直しが求められる過渡期を迎えています。