事務所名 | 分銅会計事務所 |
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所長名 | 代表税理士 分銅雅一 (登録番号第123843号) |
所在地 | 〒160-0022 |
電話番号 | 03-6380-1093 |
FAX番号 | 03-6380-1094 |
業務内容 | 自社株式と不動産の承継に関連する 1.相続税・譲渡所得税の税務申告 2.相続・事業承継対策の立案及び実行支援 3.個人及び法人の税務顧問 4.セミナー及び研修の講師 |
適格請求書発行事業者登録番号 |
<「優良な電子帳簿のススメ!」のリーフレットについて>
令和6年9月18日に、国税庁のウェブサイトに「リーフレット「優良な電子帳簿のススメ!」が掲載されました。
改正電子帳簿保存法においては、いわゆる電子取引データについては電子保存を強制する措置が定められており、2年間の宥恕期間を経て、本年の1月1日以降の取引から開始されています。
今回は、改めてこの電子帳簿等保存制度について確認し、最後に優良な電子帳簿について確認をしていきます。
電子帳簿等保存制度とは、税法上保存等が必要な「帳簿」や「領収書・請求書・決算書など(国税関係書類)」を、紙ではなく電子データで保存することに関する制度をいい、下記の3つの制度に区分されています。
①
電子帳簿等保存(任意措置で希望者のみ)
ご自身で最初から一貫してパソコン等で作成している帳簿や国税関係書類は、プリントアウトして保存するのではなく、電子データのまま保存ができます。例えば、会計ソフトで作成している仕訳帳やパソコンで作成した請求書の控え等が対象となります。さらに、一定の範囲の帳簿を「優良な電子帳簿」の要件を満たして電子データで保存している場合には、後からその電子帳簿に関連する過少申告が判明しても過少申告加算税が5%軽減される措置があります(あらかじめ届出書を提出している必要あり)。
②
スキャナ保存(任意措置で希望者のみ)
決算関係書類を除く国税関係書類(取引先から受領した紙の領収書・請求書等)は、その書類自体を保存する代わりに、スマホやスキャナで読み取った電子データを保存することができます。
③
電子取引データ保存(強制措置で法人や個人事業者は対応が必要)
申告所得税・法人税に関して帳簿・書類の保存義務が課されている者は、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データをやりとりした場合には、その電子データ(電子取引データ)を保存しなければなりません。
この3つの制度を図示したものが次のとおりです。
※国税庁ウェブサイト
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021012-095_03.pdf#page=4 参照
このうち、①電子帳簿等保存と②スキャナ保存については任意措置であると共に、令和3年度の税制改正において、税務署長の事前承認制度が廃止されたため、いつでも体制が整ったタイミングで開始することができるようになっています。
詳細は、こちらのパンフレット等を参照してください。
① 電子帳簿等保存(任意措置で希望者のみ)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_02.pdf
② スキャナ保存(任意措置で希望者のみ)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_03.pdf
一方、③電子取引データ保存については、任意措置ではなく強制措置であるため、早めの準備が必要となります。
その準備にあたっては、下記のとおり令和5年度の税制改正において、一部が見直されているため、これらも考慮していく必要があります。
・検索機能の全てを不要とする措置の対象者の見直し
税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)」に応じることができるようにしている場合に検索機能の全てを不要とする措置について、以下のとおり対象者が見直されました。
イ 検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000 万円以下」の保存義務者から「5,000 万円以下」の保存義務者に拡大されました。
ロ 対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加されました。
・令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、適用期限(令和5年 12 月 31 日)をもって廃止になりました。
・新たな猶予措置の整備
次のイ・ロの要件をいずれも満たしている場合には、改ざん防止や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができることとされました。
イ 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
ロ 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合
以上をフローチャート化して図示したものが下記のとおりです。
※国税庁ウェブサイト
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_01.pdf 参照
では、「優良な電子帳簿」とはどのようなものを指すのか?これについて、今回掲載されたリーフレットにおいて、下記のとおり紹介されています。
「優良な電子帳簿」とは、税法上保存が必要な「帳簿」につき、次の①②に加え、③から⑤までの要件を満たしたものをいいます。
① システムの説明書やディスプレイ等を備え付けていること
② 税務職員からのデータの「ダウンロードの求め」に応じることができること
③ 訂正・削除・追加の履歴が残ること
④ 帳簿の相互関連性があること
⑤ 取引等の日付・金額・相手方に関する検索機能があること
これらの要件を満たした「優良な電子帳簿」を保存している場合には、その帳簿に関連する過少申告があっても、過少申告加算税の割合が原則10%から5%に軽減されることとなります。
ここでいう帳簿とは、「仕訳帳」、「総勘定元帳」のほか、下記の「その他必要な帳簿」について上記①から⑤までの要件を満たす必要がありますが、「その他必要な帳簿」については全てを作成する必要はなく、作成されているものについて、上記要件を満たしていればよいこととなります。
<その他必要な帳簿の具体例>
売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、貸付帳、借入帳、未決済項目に係る帳簿、固定資産台帳、繰延資産台帳、賃金台帳(所得税のみ)、有価証券受払い簿(法人税のみ)
しかし、「仕訳帳」や「総勘定元帳」については、「優良な電子帳簿」の要件を満たしたとしても、「その他必要な帳簿」について上記要件を満たすことが一般的には困難であると推察されます。まずは、「一般の電子帳簿」保存から是非チャレンジしてみて下さい。