事務所概要

事務所名分銅会計事務所
所長名
代表税理士 分銅雅一
(登録番号第123843号)
所在地

〒160-0022
東京都新宿区新宿二丁目3番12号 グレイスビル7F

電話番号03-6380-1093
FAX番号03-6380-1094
業務内容

自社株式と不動産の承継に関連する

1.相続税・譲渡所得税の税務申告

2.相続・事業承継対策の立案及び実行支援

3.個人及び法人の税務顧問

4.セミナー及び研修の講師

適格請求書発行事業者登録番号

T2810600793215

ブログ 2025年12月26日 

<令和8年度税制改正大綱(資産課税)について>

 

 令和7年12月19日、自由民主党および日本維新の会から「令和8年度税制改正大綱」が公表された。公表直前に、いわゆる178万円の壁についての合意など大きなニュースとなりましたが、今回は、税制改正大綱の中から、「税負担の公平の確保に向けた是正」の一つとして「不動産に係る公平の確保」として掲げられた「貸付用不動産の評価方法の見直し」について紹介していきます。

「不動産に係る公平の確保」として、相続税や贈与税における不動産評価は、近年下記のとおり改正がされてきました。

平成30年1月1日以後 地積規模の大きな宅地の評価

平成30年4月1日以後 小規模宅地等(貸付事業用宅地等)の特例制度の見直し

令和6年1月1日以後  居住用の区分所有財産の評価

今回の令和8年度の税制改正大綱において、貸付用不動産について、下記のとおり評価方法の見直しが行われる予定です。

※令和8年度税制改正大綱82頁参照 

元々、貸付用不動産の評価は、こちらの図のように通常の自用地評価に比較すると大きく乖離していると言われてきました。また、貸付用不動産については、小規模宅地等(貸付事業用宅地等)の特例制度として、200㎡まで50%減額できる制度が存在します。よって、こちらの図に置き換えると、土地については約1億円で購入したものを約3,280万円(6,560万円×50%)まで評価を引き下げることが可能となっています。

 特に相続発生直前にこのような仕組みを活用した相続税圧縮対策が横行していたこともあり、平成3041日以後に相続等により取得した宅地に係る相続税については、貸付事業用宅地等のうち、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地については、小規模宅地特例の対象外とされました。いわゆる3年縛りといわれるものです。

今回の税制改正大綱においては、この乖離をさらに解消すべく、「課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。」とされる予定です。これを下記の図に置き換えると貸家建付地評価の約6,560万円ではなく実際の取引対価の1億円で評価されることとなります。ただ、税制改正大綱の(注)書きにもあるように、「課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得した貸付用不動産に係る取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することができることとする」とされているため、下記の図に置き換えると約8,000万円での評価も認められることになります。100分の80というのは、一般的な路線価評価額が公示地価の80%程度であるところからきていると思われます。

 また、本改正は土地のみならず建物についても同様の措置がとられる予定です。したがって、いわゆる5年縛りの対象となると、貸家評価約2,520万円が6,000万円と評価され、課税上弊害がなければ約4,800万円(6,000万円×80%)として評価されます。

では、これらの改正はいつから行われる予定なのか、税制改正大綱においては、下記のとおり令和911日以後に相続等により取得する財産の評価に適用するとしています。一方で、この5年縛りの規定は、従前から所有している土地に新築した家屋には適用しないとしています。つまり、従来から所有している土地上に新築された貸付用不動産については、いわゆる5年縛りの対象外となり、貸家評価での評価になります。

※令和8年度税制改正大綱82頁参照

 例年、税制改正大綱は年明けの通常国会を経て、毎年3月末ごろに法案成立となります。本改正も令和9年1月1日以後の相続等からの適用となる予定ですが、今後詳細な内容も早めに確認して、相続対策を有効に行って頂ければ幸甚です。